「闇金ドッグス9」の感想と考察
闇金ドッグス9観ました。
結論として、今言えるのはですね……
「なんだこの作品は……!!!!」
これに尽きます。いやー痺れた。最高に痺れた。
鑑賞後とりあえず叫ぶしかなかった。ガチウルからずーっと観てきて、9にしてこれ。
もう喜怒哀楽のどれでもない感情に支配されるあの感覚を味わえたのは、これまでシリーズでやってきた今作品ならではじゃないかと思う。
泣いた。泣きましたよ。前回の8の印象が“これぞ闇金ドッグス”と呼べるものだったと感想に記しましたが、今回の9も8とは違ったアプローチの仕方で“これぞ闇金ドッグス”と思わせてくれた。闇金ドッグスに関わる全ての方の闇金ドッグス愛を心から感じた。
前置きが長くなりましたが、興奮冷めやらぬ(というかもう冷める余地が見当たらない)今、溢れる想いを何とか言語化していきます。
既に見当がついていらっしゃる方もいるかもしれません。
今回、シリーズ最長の感想と考察記事になっておりますので、ご容赦を。
ネタバレありますので、ご注意ください。
【あらすじ】
女の扱いに絶対の自信を持つ須藤司(青木玄徳)は女性専用の金融システム「ウィーメンダイヤル」で順調に債務者を増やしていた。ある日顧客として現れたのはデリヘル嬢の間宮マミー(龍野りな)。マミーはシャブを一緒に提供する“キメセクセット”が好評なデリヘルで働き、そこを仕切っている若いヤクザの矢作まもる(長村航希)の指示で司の元にやってきた。上納金に困ったまもるは、素性を隠させてマミー以外の店の女たちにも「ウィーメンダイヤル」から金を借りさせる。次々に現れる女たちに気前よく金を貸した司だったが、回収に苦戦してしまう。ある日、ようやく連絡を取り付け、赴いた待合せ場所で、画を描いていたまもると遭遇。何かと難癖をつけられて回収に失敗する稚拙な司に、苛立つラストファイナンスの社長・安藤忠臣(山田裕貴)だったが、元ヤクザの経験則を基に回収の術を助言する。そんな折、マミーがまもるとのキメセク画像をネットに投稿したことをきっかけに事態は思わぬ方向に進んでいく。
さて、では感想と考察を。
今回の9は、5で抱えたトラウマにより一旦は忠臣の元を離れた司が、7で闇金としての葛藤を経て、忠臣の元に戻る決断をしたその後(作品上では)初めての債権者との内容になっています。
今回の物語におけるメインテーマは「ヤクザ」。
冒頭から忠臣がヤクザの顧客を対応するシーンで始まります。
月末には上納金を納めなければいけないヤクザたちは、若頭であれ、構成員であれ、立場関係なく足りない分を補うために、忠臣の元を訪れます。
その姿に思わず「ヤクザが闇金から金借りるなんて、世も末ですね」と零す司に、「暴対法でどこもしのぎが厳しいんだよ」と返す忠臣。
それに対し司は「女はヤクザより堅いっすから」と、自分の顧客を増やすために、ビラより効果がると踏んでティッシュ配りで女性専用のウィーメンダイヤルを宣伝します。
持ち前のイケメン顔を存分に活用し、どうやらティッシュ配りによる宣伝効果は絶大だった様子。(確かに、ビラを貼るだけじゃ、司のイケメンっぷりは分からないもんね)
ただ、ここで司からティッシュを受け取ってしまった一人の女性の存在が、その後物語を大きく動かすことになります。
それが、間宮マミー(龍野りな)。
マミーはシャブを一緒に提供する“キメセクセット”が好評なデリヘルで働くデリヘル嬢。そこを仕切っているのが、ヤクザの矢作まもる(長村航希)。このまもる君、今作において司と忠臣に次ぐ、第2の主人公と言っても過言ではない重要な役どころとなっています。
まもるは童組 亀鶴田興業若頭である陣内の下で、若いながらも事業を軌道に乗せ、厳しい上納金を月末にはしっかり納める存在。
陣内との様子を見るに、陣内を慕っており、認められたい一心でギリギリながらも必死に上納金を納めているのが分かります。
そんなまもるに対し、陣内は更なる上納金の増額を指示しますが、期待を応えたいまもるは断ることができません。
まもるはマミーに残業させながら何とか稼ごうとしますが、陣内から示された上納金にはなかなか達しない。焦ったまもるは、たまたまマミーが所持していたティッシュを見て、「ウィーメンダイヤル」の存在を知り、マミーらデリヘル嬢に、司の元へ行かせ、金を借りるよう指示します。
そんな事とはつゆ知らず、マミーたちにポンポンと金を貸してゆく司。
担保のくだりでマミーのお色気作戦にまんまと乗っちゃうシーンは思わず「司ーーー!!!!」となっちゃいましたね^^;
よく、忠臣さん黙ってたな……。でも、忠臣さんも毎回口出すわけじゃないんだよね。ある程度は司に任せてる。そうしないと司も成長できないしね。頑張れ、司!
……としたかっただろう忠臣さんも、さすがにそれが何人も続くと「お前ちゃんと相手見てんのか」って言っちゃうよね。いや、あれは言っちゃうよさすがに。我慢した方だと思うよ忠臣さん……。
そんな忠臣さんに対し「俺、女で失敗しないんで(キリッ)」じゃないよ司ーーー!!!(2回目)
と、そんな司のおかげ(?)で、金を借りることに成功したまもるは、無事に陣内から提示された上納金を納めます。
他の兄貴分ふたりが納められなかったことにより、陣内から叱責を受けている様子を見て、思わずほくそ笑むまもる。
「一番若いまもるが、こんなにも俺のことを思ってくれてるのによ」
まもるの承認欲求が、満たされた瞬間ですね。
その一方で、司はマミーたちと連絡が取れないことに焦ります。
必死に電話をかけまくる司の後ろで、無表情で煙草を吸う忠臣さんの視線が痛い^^;
だから言ったじゃねえかよ、と言わんばかりの圧。
司はただただ留守電を残すしか術がありません。
そんな中、やっとマミーと連絡が取れた司は、急いで指定された場所へと向かいますが、そこにはまもるの姿が。そこでようやく司は、全てまもるが指示したことだと知ります。
借金を踏み倒そうとするまもるに、最初は強気に迫る司でしたが、まもるがヤクザの人間であることを知った瞬間、怖気づいて取り逃がしてしまいます。
そんな司に忠臣は「バカ。そいつチンピラだぞ。小物相手にビビりやがって」と呆れた様子。(あの忠臣さんが頭抱えてる……)
さっさと取り返してこいと指示しますが、「組の名前言われちゃ、どうしようもないじゃないですか」と反論する司。
忠臣は司に静かに諭します。
「ヤクザほどいい客はいねえぞ。あいつら銀行口座も作れねえ。だから俺ら闇金からしか借りられねえ。てことは、下手売ったら他からも借りられなくなる。それ以上に、組の看板に泥塗るわけにはいかないからな。ヤクザは何がなんでも返してくるんだよ。条件は、高金利一括返済だ」
ヤクザの元組長である忠臣さんから淡々と発せられる言葉。
堅気として、闇金として、これまで経験してきたからこそ学んだ好条件。
昔は忠臣さんもまさしくその立場だったんだよなあ。忠臣さんも闇金である小中から金を借りていた。その立場だったからこそ、どうしようもならないヤクザの金策事情を知っている。
場面は変わって、陣内とまもるのシーン。
上納金をしっかり納めたまもるに対し、陣内は酒を交わしつつ「何か欲しいものはあるか」と問いかけます。
それにチャカと答えるまもる。
「もう少し……ヤクザとしてのシンボル、欲しいっていうか」
しかし、すぐに「こうして可愛がってもらえてるだけで充分です」と訂正します。
そんなまもるに対し、陣内は唐突に、杯を交わした居酒屋がなくなった話を切り出し、「俺たちはそんなことねえよな。ちゃんと絆、あるよな」と微笑みます。
「どういうことっすか?」と戸惑うまもるに、陣内は更なる毎月の上納金の上乗せを要求。
先月分の上乗せ分をも何とか用立てたまもるは動揺しますが、
「親分は喜んでくれるはずだ。まもる、俺は直参に駆け上がる。もちろん、お前も来るだろ?」と投げかける陣内。
そんな陣内に「この命、親父に捧げます」とまもるは応えるのでした。
さて、忠臣から助言を受けた司はデリヘルの客になりすまし、再度まもるの元を訪れます。
忠臣から言われた通り、組の看板に泥を塗らないためにも金を返せと迫る司。そんな司を煩わしく思ったまもるは、司を陣内の元へ連れていきます。
陣内に司のことを話し、今回の件を打ち消そうとしたまもるですが、反対に陣内にボコボコにやられる羽目に。
司は使用者責任という名目で陣内から金を徴収しようとしますが、陣内はうちには関係ないことだと跳ねのけます。
「(まもるは)組員じゃねえぞ。準構成員。堅気だぞ」と。
その言葉を聞いて、耳を疑うまもる。確かに杯を交わしたはずだと。
しかし陣内は「構成員になるには組長の杯がいるんだよ。ヤクザの門叩いて、そんな常識も知らねえのかよ」と吐き捨てます。涙を流しながら、呆然と立ち尽くすまもる。
そんな中でも、司はめげずに陣内に詰め寄りますが、「俺がいつから借りた?」と聞く耳を持ちません。
その様子を目の当たりにした司は、「ヤクザって何でも暴力で解決しようとしますよね」と忠臣の前でぼやきます。
そんな司に「まあ所詮、ヤクザなんて暴力を担保にしたサラリーマンだからな」と返す忠臣。
ここの表現の仕方、実に言い得て妙ですよね。元々ヤクザの世界に身を置いていた忠臣さんだからこそ出来る表現だな、と。
さらに「暴力なんてちっぽけだよ。堅気の欲望ほど、怖いもんはねえ」という言葉も。
ヤクザから闇金の世界に足を踏み入れてから、様々な債権者との修羅場を経験してきた忠臣さんの“これまでの時間”を生々しく感じさせるものでした。
そして始まりました!!
「元組長 安藤忠臣による世界一分かりやすいヤクザ社会の構成講座」
ご丁寧に紙に書いて説明してくれる忠臣さん。これ司のためなんだけど、視聴者のためでもあるよね。めちゃくちゃ分かりやすいです、この解説。どこぞのカリスマ塾講師かと←
冗談はさておき、話を戻しまして。
ここで登場、童組組長の武田玄。陣内との二人の会話のシーンなんですが、ここちょっと注目なんですよ。
作品発表時に闇ドとのクロスオーバーを匂わせていた「ボーダーライン」での登場人物、アベルとレオと名前がここで出てきます。まさかここで物語が繋がってくるとは……ちょっと不意打ちでビックリしました。この感じだと、今後も関係してくる気がしなくもない。
武田組長の話の内容としては、上記の件、対立する大山彦組系列の南天龍組と揉めているということ。童組の中で本来御法度であるはずのシャブを取り扱っている輩がおり、その人物を突き止めてほしいということ。そして、上納金の更なる上乗せの要求。
上には上がいる。上納金は全て本家が吸い取る仕組み。まもるがいるのは果てしなく下の下なのだと痛感するシーン。
そんなヤクザの世界で果てしなく最下層に存在するまもるは、悪態をつきながらも、少しずつ司に借金を返済する日々。
司に金を返すため事務所を訪れていたまもるは、ここで忠臣と出会います。
その姿と安藤忠臣という名前に即座に反応し、嬉々とした表情で忠臣に話しかけるまもる。
「大山彦組の準構成員だった安藤さんが、最年少組長記録樹立したって伝説は、俺たちの間では語り草なんです」
「安藤さん、18で自分の兄貴はじいて手柄挙げたって、ホントっすか」
「やっぱりそんくらいの気概がないと、組長にはなれないもんなんすかね」
興奮冷めやらぬ様子で次々と言葉を投げかけるまもるに対し、どんどん無になっていく忠臣さん。
(この忠臣さんの表情をうまく表現できる言葉が見当たらない。兄貴をはじいた~の辺りから、じわじわと表情が変わっていくあの感じ。この時の忠臣の複雑な心情を出し過ぎない絶妙な表情が出来たのは、長年忠臣として生きてきた山田さんだからこそだと思う)
「用がないなら、帰れよ?」
有無を言わせぬ物言いで、まもるを黙らせる忠臣。
即座にまもるはその場を立ち去りますが、司は慌ててまもるを追います。
「今の話まじか!? 忠臣さんが兄貴はじいたって!」
……そうか、この事をまだ知らなかったんだね司は。
司はどこまで忠臣さんの過去を知ってるんだろうか、と闇ド2からずーっと考えてたんだけれど、この感じだと元組長であるってことくらいだったのかな、知ってるのは。
(ちなみに司のこの情報元は勝手に小中さんじゃないかと推察してる)
というか、驚いたのは忠臣さんのあの事件のこと、ネットに載ってるの!?!?
ニュースで??それとも都市伝説的なやつ???
当時忠臣さん未成年だった訳だけど、実名が出てるとなると、成人して組長になった後っぽいよね。となると、やっぱりあの後捕まったのかな? それとも被疑者不明? 代理を立てたか?
正直この辺り凄く気になるんですが、何分情報が薄いので、どうしても憶測になっちゃいますね^^;
何てったって忠臣さん18歳で準構成員、20歳で組長という飛び級も飛び級なので。今作品でまもるを見ていると、忠臣さんのスピード出世がいかに特例だったかが分かります。そりゃ伝説として語り継がれるわな……。
忠臣の思わぬ過去を知り、驚きを隠せない司。
「普通兄貴分打つか!?」
「同じ立場なら俺もそうする。他の野郎に親父の玉取られるくらいなら、この手で親父を葬ってやりたい。そういうもんだ」
「……そういうもんか」
「……んなわけねーだろ!何が絆だ。ふざけんじゃねぇよ!方針転換!見る目なかったわ!いずれ足元救ってやるよ!俺はな、俺のやり方で組員になってやるんだ!……俺はトップ取る人間だぜ」
ここのまもると司のシーン、凄かった。
準構成員だと知る前であるならば、間違いなくまもるは親父の為に身を張って死ぬことも厭わなかったはず。けれども、ただ利用されている一介の下っ端に過ぎないことを知ってしまった。
信じて慕っていた親父に、上納金のためにうまく利用されていただけだということ知ったまもるの絶望感。
泣くように笑うまもるに、同調するような司の表情。司もトラウマを乗り越えたとはいえ、いろいろと思うことがあるんだろう。
どうすることもできない理不尽さ。真面目な人間が馬鹿を見る。ただ真っ直ぐなだけでは生きていけない世の中。
一緒になって笑うふたりの姿はあまりにも痛々しい。
しかしそんな失意の中で、どうにか這い上がろうともがくまもるに、更なる追い打ちが。
マミーがSNSにドラッグやまもるとの写真を上げていたことが分かります。
極道においても、シャブは御法度。あまりの事態にまもるは絶望します。
最悪殺される覚悟をして陣内の下に向かったまもるですが、そこで思いもよらぬことを依頼されます。
「南天龍組の組長、はじいてこい」
陣内のその言葉に、驚愕し震えるまもる。
「お前が出所するころには、俺は組長だ。その時はお前を舎弟頭にしてやる」
そう言って微笑みながら銃を渡す陣内。しかし、まもるの表情は変わりません。
嫌という程分かっているんですよね、この時点でまもるは。
陣内の言うことはもう当てにならないことを。自分が使い捨ての駒に過ぎないということを。
覚束ない足取りでデリヘルを行っているホテルに戻ったまもるは、そこでマミーが兄貴分によって、無残な姿で殺されている現場を目の当たりにします。
そのあまりの凄惨な光景に逃げ出してしまうまもるですが、既に陣内の舎弟が待ち構えていました。どうしたって逃げられないことを悟ったまもる。
そんなまもるの元へ、金を徴収しに来た司ですが、まもるから全てを明かされます。
「俺、懲役行くんだ。チャカ、弾くことになった。今から、南天龍組の、組長の玉、取るんだわ。これで勲章ゲットだぜ」
「いいように使われてるだけじゃねえか」
「分かってる」
「お前は俺に金を返さなきゃなんねえ。金返せ!」
「……俺は、ヤクザなんだよ」
ああ……、ふたりのこの会話が辛い。
慕うこともできなくなった陣内の命令に、嫌でも背くことは出来ないまもる。司はそんなまもるの心情を、これまでを見てきているからこそ分かるんだよね。
金を貸してるにも関わらず、「逃げちまえよ」と言ってしまう司がらしいというか……。
金貸しと債権者に過ぎなかったふたりですが、これまでのやり取りを通して、ある種友人のような関係性になっているんですよね。
司の良い所でもあり、悪い所だなあ。その性格故に、債権者と親密になりすぎてしまうというか……、3のえりな然り、5の沼岸然りね。
闇金をやる上ではしんどい性格ですよね。それが司らしさ、なんですけども。
そんな司に喝を入れるのが忠臣さん。
非情になきれない司の性格を熟知しているであろう忠臣さん。
「金は金だ。命がけで取り戻せ」
しかし、金貸しである以上、踏み倒すことは許されない。
忠臣の喝に突き動かされ、司は金を取り戻すために陣内の下へ再び乗り込みます。
金を返させるために、そしてまもるを守るために。
何とか陣内に、まもるへ出した指示(組長を殺させること)を覆そうとする司。
この話の持っていき方は実に司らしいですよね。
しかし、陣内は相変わらず聞く耳を持ちません。
「あいつは駒だ。ものはいらねえんだよ」
司に銃を突き付け、追い返す陣内。
成す術もなく帰路に着く最中、まもると居合わせる司。
怯えるように、焦るように、それでも意を決したように歩みを進めたまもるですが、警察官に声を掛けられ、逃げ出したがために取り押さえられてしまいます。その手から奪われる拳銃。
「ラッキーーー!!ラッキーーーーー!!!!」
まもるは警察官から押さえつけられながら、ただ、そう叫び続けるのでした。
これ、警察に通報したのって司かな?と思ったのですが、どうでしょう。
金を返してもらう以前に、まもるを駒としか思っていない陣内からまもるを救うために、最終手段を取ったのかなと。
そう考えると、次の忠臣と司のシーンも頷けるんですよね。警察からの電話に「だから、俺は関係ないっすよ。俺とまもるはただの友達ですから」って返す司に、ああああーー!ってなった。
忠臣から怒られることなんて百も承知で、それでも司は救いたかったんですよね、まもるを。
救えない命がどうしたってあることを、司は嫌というほど学んできてる。トラウマを経て、吐くほど嫌だった闇金の世界に自ら戻ってきた司。
司は自分で、自分は忠臣のようにはなれないことを悟っている。それがいかに甘いことかも。
おそらく忠臣も、それを分かっていて、ある程度は許容している面もあると思うんです。しかし、金貸しである以上、貸した金は何をしてでも取り戻すという根底だけは、覆すことは出来ない。
まもるへ貸した金を、自分の金で補おうとする司に、「いらねえよ」と返す忠臣。
そして向かったのは、陣内の事務所でした。
まもるへ貸した金を払えと陣内に迫る忠臣。
「商売できなくしてやろうか?」と逆に脅す陣内に、笑みを浮かべます。
「次郎は元気か?」
これ……これですよ……。忠臣さんの口からこの言葉聞いた瞬間、鳥肌が立った。
全て知っていたんですね、忠臣は。
次郎が現在、大山彦組系列の南天龍組若頭であり、陣内と結託して、双方の組長を始末し、この辺のシャブの利権を牛耳ろうとしていること。
まもるがデリヘルで使っていたシャブは、全て陣内が次郎から用立てたものだったのです。
画策していた計画を全て悟られてしまっていた陣内は、大人しく金を返すしかないという……。
いやーここ本当にヤバかった。
まさか、闇ド9にして、次郎の名を聞くことになるとは……。震えた。
このふたりについては、ちょっと後でまた語ります。
そうして、忠臣によって金を取り戻すことが出来た司。
「為になりました」と言う司に、忠臣は朝から道端に座り込んで酒を飲む男に目をやり、司に「あのおっさんを見てどう思う?」と問いかけます。
「アル中でしょ?」と返す司に、今日が月末であることを確認する忠臣。
「朝まで仕事して、給料日でお疲れの一杯やってんじゃねえのか?」
「金を貸すなら、ちゃんと相手を見ろ」
静かに、しかしハッキリとした口調で諭す忠臣。
何というか……説得力が半端ない。
暴力より堅気の欲望の方が恐ろしいと言った忠臣。かつてヤクザの世界で死ぬほどこの世の裏をその目で見てきているはずの忠臣ですら、恐ろしいと思う、どん底社会の欲望。その世界で生き抜くためには、相手を見抜く能力がいる。
こをれまでどれだけの修羅場を乗り越えてきたか、それこそ闇金を始めたばかりの頃の忠臣さんを知っているだけに、ここの言葉の重みをひしひしと感じる。
そんな忠臣の言葉を噛みしめるように、ゆっくり後を追い歩く司。
うん。まだその距離は近くはないけれど、忠臣のようにはなれないかもしれないけれど。司は司なりのやり方が見えてくるはず。
まだまだこれからだよ、司も。
いやーここまで、ストーリーを順に追ってきましたが、闇金ドッグス9の何がヤバかったかって、闇ドファンは全員感じたと思うんですが、これどうしたってガチバンの忠臣さんを彷彿とさせる演出にあるんですよ。
冒頭に述べたように今回のテーマは「ヤクザ」でした。
今回、童組の準構成員であるまもるが中心となって物語が進んでいきましたが、このまもるの立ち位置が、まさしくガチウルにおける忠臣さんなんですよね。
兄貴分(まもるの場合は親父)を慕う準構成員であり、シャブをきっかけに、人を殺す決断を迫られるという立場に追い込まれていく展開。
きっかけやラストの展開など、違う点も多くありますが、それでも意図的なものを感じました。
そして、語らせてください……。
ガチバンから闇ドへ繫がる唯一の存在である次郎の登場についてですよ!!
予告見た時あの一瞬の登場シーンに「うえ!?」って叫んだよ。次郎は今の忠臣を形成する上で、兄貴に次ぐほど、大きく影響を与えた存在だと思うんですよ。
準構成員に過ぎなかった忠臣が組長に登り詰めるまでの経過を知っている唯一の存在でありながら、忠臣が闇金の世界に足を踏み入れるきっかけとなった、まさにその裏切りの張本人。
忠臣は、次郎のその後(闇ド以降)をちゃんと知っていた。(仕事上情報収集は必要なんだろうけど)
そして、そんな次郎が何を画策しているかを、ドンピシャに当ててしまうというね……。次郎が今どんな立場でどんなことをしようとしているか。それは、長い間ずっと一緒にいた事がある忠臣だからこそ、悟れたことなんだろうと……そう窺えた瞬間もう、頭抱えました。
元組長と、その元舎弟。その舎弟は組長を裏切り、今となっては方や闇金の社長で、方や組の若頭。何という関係性なんだ本当……。
忠臣と次郎については、またもうひと悶着ありそう。直接ふたりが対峙する何かが、ね。(それこそ、そのきっかけにはボーダーラインが絡んできそうな気もする)
ここまで考察してね……思うことはただ一つ。
前回の記事でも書いたんですが、闇金ドッグスほど“時の流れ”を感じさせる作品ってないんですよ。過去を経て、今を経て、そして今後をここまで考察させる作品なんですよ。
ガチウル、ガチジェネ、そして闇金ドッグスシリーズ。
安藤忠臣が登場してから、既に11作品が世に出ました。遂には、その世界線に絡んでくるボーダーラインという作品まで登場しました。
これほど愛されている作品。それは他ならぬ安藤忠臣という存在を生き抜いた山田裕貴さんという役者の力、そしてそのきっかけを与えた下さった監督さんはじめとするスタッフの方々がいたからこそ、だと思うんですよ。
今回出られていた演者の方々、ひとりのみならずいろんな方が、「闇金ドッグス観ました!」というツイートひとつずつにファボされていました。
これまでそういう現象って、(気づいてないだけかもしれませんが)あまりお見掛けすることってなくて。
前にも言いましたが、闇金ドッグスの演者の方って本当に素晴らしい演技をされる方ばっかりなんですよ。そして、作品を心から愛して下さる方が多い。
今回、この闇ド9を観終わった瞬間に、いろんな感情が溢れる中で、叫びましたよ。
やっぱり、闇金ドッグス大好きだ―!!!
9まで続いてきて、つくづく私の大好きな作品だと再認識させてくれた。
感想も考察も捗る捗る。本当に、いろんな事を考え、感じさせてくれた。
そんな唯一無二の作品なんですよ。
今作品は、劇場で公開されることはありませんでした。
けれども、たくさんの闇金ドッグスファンが、DVD発売、レンタル開始の発表に歓喜したのは確かな事実で。
私は山田裕貴さんのファンだけれど、ファンという理由だけで作品を買ったり、レンタルを借りるわけじゃない。
もちろん、それも一つのきっかけかもしれないけれど、でも何よりその作品が面白い、と感じなければ、こんなにも愛される作品にはならないと思うんです。
今回、闇金ドッグスの面白さを改めて認識しました。
闇金ドッグスファンになって、毎作品面白いと思ってきたけれど、それをシリーズで見てきたからこその、今回感じ得た面白さ。
「なんだこの作品は……!!!!」と思わず唸りました。またガチバンから順番に見直したくなる。
これまでも、そしてこれからも。
あらためて、最後にもう一度言います。
やっぱり、闇金ドッグス大好きだ―!!!