ガールズブルー

好きなものをきままに考察してます。

「ガチバン ULTRA MAX」における安藤忠臣についての感想と考察

 

前回「闇金ドッグス1」の感想・考察を書いて改めて実感したこと。

それは、ガチバンシリーズについて書かないと、安藤忠臣は語れない!これに尽きます。

 

闇金ドッグスシリーズだけでも、物語としてはきちんと成立するし、面白いんですけどね。でもやっぱり、闇金ドッグスの安藤忠臣を作った原点はガチバンシリーズな訳です。この物語がないと、闇金ドッグスの安藤忠臣は作られなかったって考えると、大きいですよね。

 

ということで今回は、ガチバンシリーズの「ガチバン ULTRA MAX」「ガチバン NEW GENERATION2」の感想と考察をしていこうと思います。

今回もネタバレありますので、ご注意ください。

ちなみに、メインの主人公がそれぞれいるのですが、安藤忠臣にフォーカスを当てているので、安藤忠臣(山田裕貴)にメインの感想となります。ごめんなさいm(__)m

窪田正孝さんも陣内将さんも好きな俳優さんなんですけどね←ここまで書いていると本当に終わらなくなりそう汗)

 

まず、「ガチバン ULTRA MAX」から。

【あらすじ】

場末のスナックで用心棒として働いていた黒永勇人は、スナックに遊びにきた大山彦組の組長に気に入られるが、組の構成員・安藤忠臣はそれが気に入らず、勇人と忠臣は事あるごとにいがみ合うようになっていた。そんな中、勇人は、先輩の吉田義男を通じて知り合ったザビエル女学院中学に通う星良と距離を縮めていくが……。

 

簡単なあらすじはこんな感じです。

安藤忠臣の記念すべき初顔出しは、何と18歳。金髪でまだ少し幼さを感じさせる風貌です。(当時忠臣演じる山田裕貴さんは実質23歳な訳ですが、18歳でも全然通用する出で立ち)

闇金ドッグスの安藤忠臣の姿を知っているだけに、この姿にはちょっと驚きました。安藤忠臣沼に陥っていた私は本気で「天使やん…!」と思ってしまったほど。(詳細:

風邪をひいたら山田裕貴さん演じる安藤忠臣に全てもっていかれた話 - ガールズブルー

 

いやでもこれ闇金ドッグスから入った人は誰しもビックリすると思います。しつこいでようが、何度でも言います。ビックリするよ、18歳忠臣さん。

基本的に無感情で無骨なイメージの闇金ドッグス安藤忠臣とは何もかも違います。

 

ヤクザ社会の下っ端として生きる忠臣は、組長や兄貴分である西口に付いて回る日々。親父が毎晩のように通うスナックで、この物語の主人公である黒永勇人(窪田正孝)と出会うわけですが、最初っからいがみ合うふたり。というか、忠臣が一方的に勇人を嫌っているだけなんですけどね。それもこれも、組長が勇人を一目で気に入ってしまったから。

スナック前で組長を待つ忠臣と、スナックの用心棒として立つ勇人。このふたりのシーン、映画の中で何回か同じアングルで登場するんですが、忠臣の幼さが垣間見えるシーンだなと思います。

ちょっとしたことでケチをつけて、すぐに拳を振り上げようとする忠臣。関西風に言えばイキっていると言うんでしょうか。それがいかにも18歳らしい。

 

喫茶店での兄貴分である西口とのシーンは何とも微笑ましかったです。

褒められて、嬉しい感情を抑えきれず、その態度を指摘され怒られれば、すぐに拙いながらも必死でメモを取る。めちゃくちゃ素直でいい子やないか……。

このシーンで、忠臣さんがなぜ18歳にして、ヤクザの世界に入ることになったかが分かります。

どうやら母親が忠臣を組事務所に入れたようです。この時点で忠臣は18歳。高校には3日間だけ通ったという発言があるので、16、17歳の時には既にヤクザの世界に入れられたのかもしれません。そんな母親を忠臣は良くは思っていない様子。忠臣の様子から察するに、厄介者払いされたという感じなのかな。兄貴には「親は親な。死ねとか言っちゃダメな」と諫められますが、忠臣からしてみれば、母親に捨てられたという思いが強いのでしょう。

兄貴との会話でも、親父との会話でも、忠臣がどれだけ愛に飢えているかということが、痛々しいまでに伝わってきます。

ちょっと褒められただけでも嬉しいし、誕生日を憶えてもらっていただけで感極まってしまう。そんな些細なことでも、この上ない幸せだと思っていそうな忠臣。どんな幼少期過ごしてきたのよ……。

 

しかし、その兄貴分が組長の意に反し、薬を流しているということを知ってしまう忠臣。慕っている西口に、薬の流しを手伝えと言われてしまいます。

動揺する忠臣に、諭すように話す西口の台詞が印象的だったので抜粋。

 

「おい、俺ら何のためにヤクザだ。ヤクザの生きる価値ってなんだ」

「……分かんないっす」

「……忠臣。ヤクザはテッペン取ってなんぼなんだよ。俺はテッペン取るぞ。その時はテメエが頭だ」

 

 

この会話の後の複雑そうな忠臣の表情ったらもう……。けれど、後々の展開を知っていると、この会話の内容って安藤忠臣にとって、とても大事な部分な気がしてなりません。これについては追々また話すとします。

 

それと、キーになってくるのが兄貴の時計の話ですね。”男の価値は時計で決まる”という兄貴の教えに、安いながらも腕時計してくる忠臣の素直さ半端ない。しかも、それを自慢げに勇人に指南するわ、でも逆に時計の安さを指摘されてキレちゃうわ、18歳忠臣のピュアっぷりが凄すぎて頭ついていかなかった……。少年期万歳←

 

そんなピュアさ満載の忠臣ですが、物語は彼をどんどん追い込んでいきます。

組長が西口の薬の件を知り、忠臣に西口を殺せと言います。動揺を隠せない忠臣。そんな忠臣に追い打ちをかけるように、組長は「そういや、お前、名前何君だっけな」と……。組長それ絶対言っちゃダメなやつだよ。耐え切れず涙を零す忠臣。そりゃそうだよね。慕ってる兄貴を殺せと言う組長が、自分のこと何も知らない、知ろうともしない人なんだから。生い立ち故に承認欲求が異様に強い忠臣にとって、組長のこの言葉は忠臣を打ちのめすには充分だったでしょう。

しかし、そこで登場するのが主人公の勇人です。勇人は白血病を患う星良(永野芽郁)の治療費のために、組長に何でもするから金をくれと持ちかけます。もともと、勇人を気に入っていた組長は、銃を渡し、西口を始末するよう依頼するのです。

このことが、忠臣と勇人との殴り合いになる決定的なきっかけとなってしまった。勇人は星良のため、何でもするという覚悟をもって拳銃を手にするのですが、それが逆に忠臣の覚悟をも決めてしまうのです。このまま勇人に殺されるくらいなら、自分が西口を殺す、と。

 

こうして二人の殴り合いになるのですが、そりゃもう激しい。闇金ドッグスは喧嘩がメインの話じゃなかったので、少し驚きました。血だらけになりながら殴り合う二人の姿は痛々しくて、お互い守るべき心情があって臨んでいるからこそ、なかなか決着もつきません。

しかし最後は忠臣の執念が勝ちます。必死に忠臣の足に縋りついて止めようとする勇人に対し、忠臣が放った台詞。

 

「てめえの務めじゃねえよ……。目きらきらした男が、つり合いする世界じゃねえんだよ!」

 

ああ、これが勇人と忠臣を隔てる決定打だなと思いました。

ガチバン過去作品を観ておらず、あらすじだけをざっと見ただけなので、憶測になりますが、勇人と忠臣はどことなく似ているような気がします。けれども、勇人は荒れていても堅気として生きる身。忠臣は既にヤクザの身。この違いって結構な差だと思うんですよね。いくら精神的にも未熟であるとはいえ、忠臣のこの言葉は勇人にとっても大きかったんじゃないかと思います。星良を救いたいがために、形振り構わず拳銃を握った勇人ですが、結果としてこの方が良かったのかもしれません。後の闇金ドッグスで、ヤクザから堅気として生きなおす事の大変さが描かれているのですが、完全にとは言わずとも、忠臣はその事を理解していたのだと思います。だからこそ、これはお前の務めではないと声を荒げたのでしょう。ある意味、忠臣にとっても、勇人の存在はヤクザ社会を生き抜く覚悟を持つきっかけとなったのかもしれません。それが良かったのか悪かったのかは分かりませんが、じゃあ忠臣がヤクザから抜けれるかと言えば、この時は無理ですからね。悲しいけれど、これが一つのターニングポイントとなってしまった。

 

こうして勇人を振り切り、兄貴の元へ向かった忠臣。

「兄貴……」と漏らす声の幼さ。まるで親に甘える子のような言い方。目に涙をいっぱい溜めて拳銃を西口へ向ける忠臣。

そんな忠臣をみて、「何でお前なんだよ……」と漏らす西口。なんとなくこうなることを察していたのかな。

西口は諦めたように新聞を畳み、微笑を浮かべながら「これお前にやるよ」とつけていた腕時計を外します。そんな兄貴に忠臣はもう一度「なあ…兄貴…」と呟いて、引き金を引きます。

 

ああ、何て残酷なんだ。18歳に何て業を背負わせるんだよ畜生と言ってやりたくなった。

忠臣にとって、西口は父親のような存在だったのだと思います。実際の父親は話に出てこないので分かりませんが、出てこないということは恐らく存在を知らないか、それと似たような状態だったのでしょう。

これまでの組長や兄貴との少しのシーンだけでも、忠臣が誰かに認められたい、褒められたいという気持ちがとても強いことは一目瞭然で、西口はそんな忠臣の強い承認欲求を少なからず満たしてくれる唯一の存在だったはずです。組長は上記に述べた通り、名前すら覚えてくれないような人ですからね。それでも組長の命に従い、西口を打った忠臣。ヤクザの世界で生きるにはこうするしかなかった。そんな決断を迫られ実行せざるを得なかった忠臣が、もう見ていて切なくてやるせなくて仕方なかったです。

 

やばい。ULTRAMAXだけでめっちゃ長くなってしまった。

でも、18歳忠臣はやはり原点なので、ここはしっかり語っておかないとね←

本当はGENERATION2とまとめて書くつもりでしたが、内容量を考えて分けることにします。次は、GENERATION2とそれを踏まえて、改めて闇金ドッグス1の考察をしようと思います。

 

恒例の余談。

勇人君のその後が地味に気になる。これ以降のガチバンシリーズには出てこないんですよね、勇人君。個人的に、今の堅気で生きる忠臣(闇金ドッグス)と勇人が再会するシーンを見てみたい。どちらも”友人”なんていう間柄でも性分でもないだろうけどね。ちょろっと再会して、すぐに「もう会うことはないだろうけどな」って別れそうだけど。それも見てみたいな。っていう個人的見解(笑)