「闇金ドッグス1」の感想と考察
皆さんこんにちは。
前回は燻った熱量を存分に吐き出してしまったため、まとまりのない文章失礼いたしました。
あれから一週間。土日がやっときて、またもや闇金ドッグスを観ています。
何度みてもいいなあ。
さて、今回は山田裕貴さんに猛烈にハマってしまったきっかけとなった、闇金ドッグスシリーズについて、シリーズ毎の感想および勝手気ままな考察をしていきたいなと思います。
順番悩んだんですけど、視聴した順番でいきます。ガチバンから書いた方が考察しやすいんだけど、ガチバン視聴前の感想も書き残しておきたかったので。
ですので、まずは「闇金ドッグス1」から。ネタバレありますのでご注意を。
【あらすじ】
若くしてヤクザの親分に成り上った安藤忠臣(山田裕貴)は手下のために足を洗うことになり、仕事上付き合いのあった闇金業者の小中高志(高岡奏輔)からも追い込みをかけられる。ふんだり蹴ったりの忠臣だったが、小中から債券の回収の術を学び、自分も闇金になろうと決心する。地下アイドル“けろリズム”(冨手麻妙・紗綾)をこよなく愛するキモヲタニートが客となるが、借金の回収に苦戦する。一方、悪徳事務所社長(津田寛治)に良いようにやられ、イベントやCD発売の度に高額な金銭を要求されていた“けろリズム”のえりなもまた、アイドルを続けるため闇金に手を出していた……。
おそらく闇金ドッグスシリーズの中でも、後味の悪さは1,2を争うかな。シリーズ5が出るまでは、ダントツだったでしょう。それぞれ違う後味の悪さだけれども。(私的には5の方が精神的にやられた)
私はこういうテイストの作品見慣れているので、大丈夫だったんですが、これで後々の作品観るのやめた方が結構いそうだなあという印象。
しかし、これを観ないことには始まらない。
始まりからいきなり暴力シーンとアイドルのライブ映像のコンビネーション。この落差、ギャップが凄い。
そんな中、オールバック姿で気だるげに歩く男が出てきます。これが安藤忠臣です。
若くして組長となった人物。18歳の時に、自分の兄貴分を殺した経歴の持ち主…と。若いのに組長まで上り詰めたのは、そういった経歴からかな?というかこの時点でいくつなんだ忠臣さん。20代前半かな?という憶測。
しかし、冒頭から不穏な状況が続きます。安藤と闇金小中のシーン。ヤクザの組長って闇金からお金借りるんだ…。この小中がこの作品においてはキーパーソンとなってくるようです。
話が進むつれ、どうやら「次郎」という安藤の舎弟が、何か問題を起こしたらしいことが分かってきます。その結果、安藤は自ら組長の座を退くことに。
ここで小中が出てくるわけです。組長だった安藤にはさん付けで、返済もいいと言っていた小中ですが、安藤が足を洗った瞬間、金を返せと迫ります。まあ、組長でも何でもない安藤にへこへこする理由はないですもんね。
無一文になった安藤から借金を返済させるために、小中は他の債権者を紹介します。その債権を買い、その債権者から借金を回収すれば、借金がチャラになるともちかけます。その債権者が後のシリーズ出てくる「須藤司」な訳ですが、まあ、彼については追々話すとして。
安藤は司を見つけ出し、「マグロ漁船で働かせる」という、ヤクザ社会に生きていた男らしい提案をしますが、小中に一蹴されてしまいます。時間がかかりすぎると。そこで小中はすぐに返済できる方法を須藤にもちかけ、あっという間に返済させてしまいます。
(余談ですが、この方法のために小中が電話をかけているシーンで、窓辺にもたれかかって立つ姿の忠臣さんめっちゃ美しいっす←)
結果として、借金が余計にかさんでしまい苛立つ安藤ですが、小中は手元にある金を元手に闇金を始めてみればと提案します。こうして、安藤は闇金の第一歩を踏むわけですが…。
ここまで見ると、小中って不思議なキャラクターじゃないですか?いつも飄々として掴みどころがない彼は、何を以て忠臣さんに闇金を始めろなんて言ったのかな…と。単純に考えれば、安藤から借金を返させるため、なのかもしれませんが、それにしてもまどろっこしいやり方ですよね。(単にジャンプさせることが目的だったのかもしれないけど)その後、慣れない貸出や取り立てに苦戦する安藤に対して、ちゃんと助言までしてあげている。
かなり憶測ですが、何となく小中は安藤に対して、決して表には出さずとも買っていた部分があったのではないかと。付き合いがいつからあったのかは分かりませんが、少なくとも組長だった安藤から取り立てはしなかった訳ですし。もちろん、その方が利があると踏んでのことでしょうが、それこそ安藤を信頼していないとできない話ですからね。
小中もまさかこんなに早く、安藤が組長の座から落ちるとは思っていなかったのかもしれません。ヤクザの世界でしか生きてこなかった安藤が、堅気の世界で生き抜くためにの、小中なりの放免祝い(使い方は違うけど)のようなものだったのかな…と。
話は戻しまして。
闇金として「ラストファイナンス」を始めた安藤ですが、初めての借金回収に苦戦し奔走します。
客のひとりである丸屋から、借金を取り立てるために追いかけ回す安藤。丸屋は自分には組がバックについていると安藤を脅しますが、元組長の安藤はそんなの気にもしません。そのままその組と対峙する訳ですが、ここで衝撃の事実が判明。何とそこに自分の元舎弟であった次郎の姿が…。
安藤が組長の座を降りてまでして助けた次郎が、実は裏切りの張本人だったのです。次郎はもともと安藤のシマを狙っており、その座を奪うために影で動いていたと白状。何も知らなかったのは組長であった安藤だけだったと罵り笑います。
その上、チャカを取り出し、安藤をひざまづかせてチャカを咥えさせるという横暴っぷりなのですが…。
このシーン。ちょっと語っていいですか。このシーンですね、口に拳銃を入れられながら、安藤はじっと次郎から目を離さないんです。で、静かに涙流すんですよ。私これ初見で観たときに、安藤は屈辱と怒りでどうしようもなくなって、こんな状態になっているんだろうと思っていたんです。元組長が舎弟にこんなことされたら、そりゃ怒りで震えるよなって。もちろん、そういう感情もあっただろうし、加えて殺されるという恐怖も、それなりに感じていたかもしれない。
けどね、ガチバンシリーズを観た後だと、このシーンの見方が変わったんですよね。どちらかというと、悲しさの方が強かったんじゃないかなって。この件に関しては、ガチバンシリーズの考察にも絡んでくるので、詳細はそちらの方に書くことにしますが…。とにかく切なさ半端ないです忠臣さん。この後債権者に唾吐きかけられて、涙も同時に手で拭うとこなんか痛々しくて見ていられません。
借金も取り立てられない。自分の借金はかさむばかり。信頼していた舎弟にまで裏切られていた。小中からも厳しい言葉を浴びせられ、心身ともに疲弊する安藤。よれよれのワイシャツ姿で道路の隅に座りこむ安藤の姿は、本当に地に落ちた人間の姿そのもの。けれども、その瞳からはまだ光は消えていない。
さすが元組長やってただけはありますね。精神的にタフというか、むしろ追い込まれたことで、本当の意味で腹を括れたのかもしれません。
ここからの安藤の勢いが凄い。
債権者の母親に包丁を向けられても、手で包丁を掴んで止め、怪我を負ってもそのままひたすら探し回る。やっと手がかりを見つけて、探し当てた部屋には小中の姿が。お互いに金を貸していた債権者が、地下アイドルとそのファンで、ファンであるオタクがアイドルを殺そうしている現場に遭遇するってどんな修羅場だ。
そういやこの地下アイドルのオタクの話、全然してませんでしたね。事務所が悪徳でどんどん金をむしり取られている地下アイドルと、仕事もせず母親の金を無心している中年オタクなんですが、何ともリアルというか…こういう世界を現実であまり見たことないのですが、ここまではなくとも、こんな感じなのかなって思わせる演出でちょっと怖かったです。とはいえ、アイドルの方も事務所の問題こそあれ、ちょっとどうかなと思うシーンもあったし、オタクである良夫に関してはもう擁護することは何もない。
さて、こんな借金まみれ3人組が雁首そろえた状態に、さすがの小中も呆れ気味。面倒はごめんだと早々に立ち去ろうとするのですが、ここで状況を理解した安藤が「女を債権を買わせてくれ」と小中に訴えます。小中は訝しげに債権を売り渡すのですが、ここから安藤忠臣が本領発揮。ここの表情が凄い。ゾクッとします。
あんなに脅しと暴力に訴えた取り立てをしていた安藤がですよ?優しい声色で良夫に話しかけるわけです。「良夫、お前本当は愛してるんだよな?」と。
安藤は本当に愛しているなら、良夫がえりな(地下アイドル)の借金を代わりに払って、スーパーヒーローになってみないかと提案します。その方法というのが、良夫が担保にしていた母親の生命保険。その保険を最大限に利用するにはどうすればいい?と投げかける安藤。
「家族を包丁で刺しても、保険金目当てになるから保険は適用されない。だったらどうすればいい?普通に働いても到底借金は返せない。それがすぐに金になるなんて夢のような話だよな。その金で、借金返して、余った金でえりなと幸せになれるんだよ」
ここ、このシーン。あくまで優しく笑いかけながら話す忠臣さん、恐ろしさ半端ない。言ってることえげつないけど、借金で追い込まれた人間はこれで心動いちゃうんだもんなあ……。そして、えりながなかなか腹黒い。つい数分前にはキモオタと罵っていたのに、「このままじゃ、誰もえりなを助けてくれない」って訴えちゃうところ、さすがというか何というか。追い込むように放たれた「ほら。スーパーヒーローにならなきゃ」っていう安藤の台詞、もう良夫にとってみたら洗脳みたいなもんだよね。
で、まあその後良夫がとった行動は……想像できますよね。これが後味が悪いと言われる結末な訳ですが。
こうして小中への借金を完済した安藤。えりなは規約違反の行動をとったとして、違約金を事務所から請求されてしまいます。良夫はその後どうなったんだろう。
最後は安藤が闇金の軍資金として小中から金を借りたところで終わります。
いやー最初から最後までなかなかヘビーでした。安藤が良夫にとらせた借金の返済方法はきっと賛否両論でしょう。しかし、これはもうこうするしかなかった、と言ってしまえば終わりですが、私はもうこれは致し方ないのかなと思ってしまいました。
闇金を借りて、地に落ちた人間の行く先ってこういうことなのかなって。現実がどうかは知りませんが、少なくとも綺麗ごとで終わっていい話でもないですからね。
この闇金ドッグス1はガチバンシリーズを観たか、観てないかで話のとらえ方が結構変わると思います。
1だけを観た状態では、元組長であるが故に、それなりの覚悟と器量を持つ安藤という男が、堅気で闇金として奮闘する、ある意味ありきたりな話に捉えていました。それはそれで、物語として面白いんですけどね。実際私はハマって2と3を続けて観たわけだし。
けれど、ガチバンシリーズを観た後だと、シーンごとの忠臣さんの表情や言動に別の解釈が次々出てくるんですよね。忠臣さんの人間としての生き方や考え方が解釈として広がって、一気にリアリティが増す。
最後のシーンも然り。小中の「元組長さんがやることは仁義もへったくれもありませんね」という言葉に対しての忠臣さんの目が、ガチバン視聴後だと非常に印象に残ったんです。動じることなく、無表情で煙草を吸っている姿は、最初見たときは非情なことをしても動じない人、という印象だったのに、目に着目すると完全に”虚無”になってる。
忠臣さんが”無”になる瞬間ってこう……スイッチがあるんですよね。彼の中での。ガチバンシリーズと後の闇金ドッグスシリーズを見続けると、この忠臣さんの”スイッチ”が入る瞬間って結構重要なシーンだと思うんです。
これはもうガチバンシリーズの感想を書かないと、理解が難しいところではあると思うのですが……。
ガチバンシリーズの感想書いたら、安藤さん自体の考察も詳細にできそうなので、とりあえず今回はこの辺にしておきます。まとまりのない文章になっちゃったな^^;
またまた余談ですが、良夫君の身体がめっちゃバキバキに鍛えられてて、オタクとのギャップにびっくりしました。多分ニートのオタクはあそこまで鍛えないと思うよ。とはいえ、良夫役の古澤裕介さん、見事な演技でした。