ガールズブルー

好きなものをきままに考察してます。

「闇金ドッグス9」の感想と考察

闇金ドッグス9観ました。

結論として、今言えるのはですね……

 

「なんだこの作品は……!!!!」

 

これに尽きます。いやー痺れた。最高に痺れた。

鑑賞後とりあえず叫ぶしかなかった。ガチウルからずーっと観てきて、9にしてこれ。

もう喜怒哀楽のどれでもない感情に支配されるあの感覚を味わえたのは、これまでシリーズでやってきた今作品ならではじゃないかと思う。

泣いた。泣きましたよ。前回の8の印象が“これぞ闇金ドッグス”と呼べるものだったと感想に記しましたが、今回の9も8とは違ったアプローチの仕方で“これぞ闇金ドッグス”と思わせてくれた。闇金ドッグスに関わる全ての方の闇金ドッグス愛を心から感じた。

 

前置きが長くなりましたが、興奮冷めやらぬ(というかもう冷める余地が見当たらない)今、溢れる想いを何とか言語化していきます。

既に見当がついていらっしゃる方もいるかもしれません。

今回、シリーズ最長の感想と考察記事になっておりますので、ご容赦を。

ネタバレありますので、ご注意ください。

 

【あらすじ】

女の扱いに絶対の自信を持つ須藤司(青木玄徳)は女性専用の金融システム「ウィーメンダイヤル」で順調に債務者を増やしていた。ある日顧客として現れたのはデリヘル嬢の間宮マミー(龍野りな)。マミーはシャブを一緒に提供する“キメセクセット”が好評なデリヘルで働き、そこを仕切っている若いヤクザの矢作まもる(長村航希)の指示で司の元にやってきた。上納金に困ったまもるは、素性を隠させてマミー以外の店の女たちにも「ウィーメンダイヤル」から金を借りさせる。次々に現れる女たちに気前よく金を貸した司だったが、回収に苦戦してしまう。ある日、ようやく連絡を取り付け、赴いた待合せ場所で、画を描いていたまもると遭遇。何かと難癖をつけられて回収に失敗する稚拙な司に、苛立つラストファイナンスの社長・安藤忠臣(山田裕貴)だったが、元ヤクザの経験則を基に回収の術を助言する。そんな折、マミーがまもるとのキメセク画像をネットに投稿したことをきっかけに事態は思わぬ方向に進んでいく。

 

 

さて、では感想と考察を。

今回の9は、5で抱えたトラウマにより一旦は忠臣の元を離れた司が、7で闇金としての葛藤を経て、忠臣の元に戻る決断をしたその後(作品上では)初めての債権者との内容になっています。

 

今回の物語におけるメインテーマは「ヤクザ」

冒頭から忠臣がヤクザの顧客を対応するシーンで始まります。

月末には上納金を納めなければいけないヤクザたちは、若頭であれ、構成員であれ、立場関係なく足りない分を補うために、忠臣の元を訪れます。

 

その姿に思わず「ヤクザが闇金から金借りるなんて、世も末ですね」と零す司に、「暴対法でどこもしのぎが厳しいんだよ」と返す忠臣。

それに対し司は「女はヤクザより堅いっすから」と、自分の顧客を増やすために、ビラより効果がると踏んでティッシュ配りで女性専用のウィーメンダイヤルを宣伝します。

 

持ち前のイケメン顔を存分に活用し、どうやらティッシュ配りによる宣伝効果は絶大だった様子。(確かに、ビラを貼るだけじゃ、司のイケメンっぷりは分からないもんね)

ただ、ここで司からティッシュを受け取ってしまった一人の女性の存在が、その後物語を大きく動かすことになります。

 

それが、間宮マミー(龍野りな)。

マミーはシャブを一緒に提供する“キメセクセット”が好評なデリヘルで働くデリヘル嬢。そこを仕切っているのが、ヤクザの矢作まもる(長村航希)。このまもる君、今作において司と忠臣に次ぐ、第2の主人公と言っても過言ではない重要な役どころとなっています。

 

まもるは童組 亀鶴田興業若頭である陣内の下で、若いながらも事業を軌道に乗せ、厳しい上納金を月末にはしっかり納める存在。

陣内との様子を見るに、陣内を慕っており、認められたい一心でギリギリながらも必死に上納金を納めているのが分かります。

そんなまもるに対し、陣内は更なる上納金の増額を指示しますが、期待を応えたいまもるは断ることができません。

 

まもるはマミーに残業させながら何とか稼ごうとしますが、陣内から示された上納金にはなかなか達しない。焦ったまもるは、たまたまマミーが所持していたティッシュを見て、「ウィーメンダイヤル」の存在を知り、マミーらデリヘル嬢に、司の元へ行かせ、金を借りるよう指示します。

 

そんな事とはつゆ知らず、マミーたちにポンポンと金を貸してゆく司。

担保のくだりでマミーのお色気作戦にまんまと乗っちゃうシーンは思わず「司ーーー!!!!」となっちゃいましたね^^;

よく、忠臣さん黙ってたな……。でも、忠臣さんも毎回口出すわけじゃないんだよね。ある程度は司に任せてる。そうしないと司も成長できないしね。頑張れ、司!

 

……としたかっただろう忠臣さんも、さすがにそれが何人も続くと「お前ちゃんと相手見てんのか」って言っちゃうよね。いや、あれは言っちゃうよさすがに。我慢した方だと思うよ忠臣さん……。

そんな忠臣さんに対し「俺、女で失敗しないんで(キリッ)」じゃないよ司ーーー!!!(2回目)

 

と、そんな司のおかげ(?)で、金を借りることに成功したまもるは、無事に陣内から提示された上納金を納めます。

他の兄貴分ふたりが納められなかったことにより、陣内から叱責を受けている様子を見て、思わずほくそ笑むまもる。

「一番若いまもるが、こんなにも俺のことを思ってくれてるのによ」

まもるの承認欲求が、満たされた瞬間ですね。

 

その一方で、司はマミーたちと連絡が取れないことに焦ります。

必死に電話をかけまくる司の後ろで、無表情で煙草を吸う忠臣さんの視線が痛い^^;

だから言ったじゃねえかよ、と言わんばかりの圧。

司はただただ留守電を残すしか術がありません。

 

そんな中、やっとマミーと連絡が取れた司は、急いで指定された場所へと向かいますが、そこにはまもるの姿が。そこでようやく司は、全てまもるが指示したことだと知ります。

借金を踏み倒そうとするまもるに、最初は強気に迫る司でしたが、まもるがヤクザの人間であることを知った瞬間、怖気づいて取り逃がしてしまいます。

そんな司に忠臣は「バカ。そいつチンピラだぞ。小物相手にビビりやがって」と呆れた様子。(あの忠臣さんが頭抱えてる……)

さっさと取り返してこいと指示しますが、「組の名前言われちゃ、どうしようもないじゃないですか」と反論する司。

 

忠臣は司に静かに諭します。

「ヤクザほどいい客はいねえぞ。あいつら銀行口座も作れねえ。だから俺ら闇金からしか借りられねえ。てことは、下手売ったら他からも借りられなくなる。それ以上に、組の看板に泥塗るわけにはいかないからな。ヤクザは何がなんでも返してくるんだよ。条件は、高金利一括返済だ」

 

ヤクザの元組長である忠臣さんから淡々と発せられる言葉。

堅気として、闇金として、これまで経験してきたからこそ学んだ好条件。

昔は忠臣さんもまさしくその立場だったんだよなあ。忠臣さんも闇金である小中から金を借りていた。その立場だったからこそ、どうしようもならないヤクザの金策事情を知っている。

 

場面は変わって、陣内とまもるのシーン。

上納金をしっかり納めたまもるに対し、陣内は酒を交わしつつ「何か欲しいものはあるか」と問いかけます。

それにチャカと答えるまもる。

「もう少し……ヤクザとしてのシンボル、欲しいっていうか」

しかし、すぐに「こうして可愛がってもらえてるだけで充分です」と訂正します。

そんなまもるに対し、陣内は唐突に、杯を交わした居酒屋がなくなった話を切り出し、「俺たちはそんなことねえよな。ちゃんと絆、あるよな」と微笑みます。

「どういうことっすか?」と戸惑うまもるに、陣内は更なる毎月の上納金の上乗せを要求。

先月分の上乗せ分をも何とか用立てたまもるは動揺しますが、

「親分は喜んでくれるはずだ。まもる、俺は直参に駆け上がる。もちろん、お前も来るだろ?」と投げかける陣内。

そんな陣内に「この命、親父に捧げます」とまもるは応えるのでした。

 

さて、忠臣から助言を受けた司はデリヘルの客になりすまし、再度まもるの元を訪れます。

忠臣から言われた通り、組の看板に泥を塗らないためにも金を返せと迫る司。そんな司を煩わしく思ったまもるは、司を陣内の元へ連れていきます。

陣内に司のことを話し、今回の件を打ち消そうとしたまもるですが、反対に陣内にボコボコにやられる羽目に。

司は使用者責任という名目で陣内から金を徴収しようとしますが、陣内はうちには関係ないことだと跳ねのけます。

「(まもるは)組員じゃねえぞ。準構成員。堅気だぞ」と。

その言葉を聞いて、耳を疑うまもる。確かに杯を交わしたはずだと。

しかし陣内は「構成員になるには組長の杯がいるんだよ。ヤクザの門叩いて、そんな常識も知らねえのかよ」と吐き捨てます。涙を流しながら、呆然と立ち尽くすまもる。

そんな中でも、司はめげずに陣内に詰め寄りますが、「俺がいつから借りた?」聞く耳を持ちません。

 

 

その様子を目の当たりにした司は、「ヤクザって何でも暴力で解決しようとしますよね」と忠臣の前でぼやきます。

そんな司に「まあ所詮、ヤクザなんて暴力を担保にしたサラリーマンだからな」と返す忠臣。

 

ここの表現の仕方、実に言い得て妙ですよね。元々ヤクザの世界に身を置いていた忠臣さんだからこそ出来る表現だな、と。

さらに「暴力なんてちっぽけだよ。堅気の欲望ほど、怖いもんはねえ」という言葉も。

ヤクザから闇金の世界に足を踏み入れてから、様々な債権者との修羅場を経験してきた忠臣さんの“これまでの時間”を生々しく感じさせるものでした。

 

そして始まりました!!

「元組長 安藤忠臣による世界一分かりやすいヤクザ社会の構成講座」

ご丁寧に紙に書いて説明してくれる忠臣さん。これ司のためなんだけど、視聴者のためでもあるよね。めちゃくちゃ分かりやすいです、この解説。どこぞのカリスマ塾講師かと←

 

冗談はさておき、話を戻しまして。

ここで登場、童組組長の武田玄。陣内との二人の会話のシーンなんですが、ここちょっと注目なんですよ。

作品発表時に闇ドとのクロスオーバーを匂わせていた「ボーダーライン」での登場人物、アベルとレオと名前がここで出てきます。まさかここで物語が繋がってくるとは……ちょっと不意打ちでビックリしました。この感じだと、今後も関係してくる気がしなくもない。

 

武田組長の話の内容としては、上記の件、対立する大山彦組系列の南天龍組と揉めているということ。童組の中で本来御法度であるはずのシャブを取り扱っている輩がおり、その人物を突き止めてほしいということ。そして、上納金の更なる上乗せの要求。

上には上がいる。上納金は全て本家が吸い取る仕組み。まもるがいるのは果てしなく下の下なのだと痛感するシーン。

 

そんなヤクザの世界で果てしなく最下層に存在するまもるは、悪態をつきながらも、少しずつ司に借金を返済する日々。

司に金を返すため事務所を訪れていたまもるは、ここで忠臣と出会います。

その姿と安藤忠臣という名前に即座に反応し、嬉々とした表情で忠臣に話しかけるまもる。

 

「大山彦組の準構成員だった安藤さんが、最年少組長記録樹立したって伝説は、俺たちの間では語り草なんです」

「安藤さん、18で自分の兄貴はじいて手柄挙げたって、ホントっすか」

「やっぱりそんくらいの気概がないと、組長にはなれないもんなんすかね」

 

興奮冷めやらぬ様子で次々と言葉を投げかけるまもるに対し、どんどん無になっていく忠臣さん。

(この忠臣さんの表情をうまく表現できる言葉が見当たらない。兄貴をはじいた~の辺りから、じわじわと表情が変わっていくあの感じ。この時の忠臣の複雑な心情を出し過ぎない絶妙な表情が出来たのは、長年忠臣として生きてきた山田さんだからこそだと思う)

 

「用がないなら、帰れよ?」

有無を言わせぬ物言いで、まもるを黙らせる忠臣。

即座にまもるはその場を立ち去りますが、司は慌ててまもるを追います。

 

「今の話まじか!? 忠臣さんが兄貴はじいたって!」

……そうか、この事をまだ知らなかったんだね司は。

司はどこまで忠臣さんの過去を知ってるんだろうか、と闇ド2からずーっと考えてたんだけれど、この感じだと元組長であるってことくらいだったのかな、知ってるのは。

(ちなみに司のこの情報元は勝手に小中さんじゃないかと推察してる)

 

というか、驚いたのは忠臣さんのあの事件のこと、ネットに載ってるの!?!?

ニュースで??それとも都市伝説的なやつ???

当時忠臣さん未成年だった訳だけど、実名が出てるとなると、成人して組長になった後っぽいよね。となると、やっぱりあの後捕まったのかな? それとも被疑者不明? 代理を立てたか?

正直この辺り凄く気になるんですが、何分情報が薄いので、どうしても憶測になっちゃいますね^^;

何てったって忠臣さん18歳で準構成員、20歳で組長という飛び級飛び級なので。今作品でまもるを見ていると、忠臣さんのスピード出世がいかに特例だったかが分かります。そりゃ伝説として語り継がれるわな……。

 

忠臣の思わぬ過去を知り、驚きを隠せない司。

 

「普通兄貴分打つか!?」

 「同じ立場なら俺もそうする。他の野郎に親父の玉取られるくらいなら、この手で親父を葬ってやりたい。そういうもんだ」

「……そういうもんか」

「……んなわけねーだろ!何が絆だ。ふざけんじゃねぇよ!方針転換!見る目なかったわ!いずれ足元救ってやるよ!俺はな、俺のやり方で組員になってやるんだ!……俺はトップ取る人間だぜ」

 

ここのまもると司のシーン、凄かった。

準構成員だと知る前であるならば、間違いなくまもるは親父の為に身を張って死ぬことも厭わなかったはず。けれども、ただ利用されている一介の下っ端に過ぎないことを知ってしまった。

信じて慕っていた親父に、上納金のためにうまく利用されていただけだということ知ったまもるの絶望感。

 泣くように笑うまもるに、同調するような司の表情。司もトラウマを乗り越えたとはいえ、いろいろと思うことがあるんだろう。

どうすることもできない理不尽さ。真面目な人間が馬鹿を見る。ただ真っ直ぐなだけでは生きていけない世の中。

一緒になって笑うふたりの姿はあまりにも痛々しい。

 

しかしそんな失意の中で、どうにか這い上がろうともがくまもるに、更なる追い打ちが。

マミーがSNSにドラッグやまもるとの写真を上げていたことが分かります。

極道においても、シャブは御法度。あまりの事態にまもるは絶望します。

最悪殺される覚悟をして陣内の下に向かったまもるですが、そこで思いもよらぬことを依頼されます。

 

「南天龍組の組長、はじいてこい」

陣内のその言葉に、驚愕し震えるまもる。

「お前が出所するころには、俺は組長だ。その時はお前を舎弟頭にしてやる」

そう言って微笑みながら銃を渡す陣内。しかし、まもるの表情は変わりません。

嫌という程分かっているんですよね、この時点でまもるは。

陣内の言うことはもう当てにならないことを。自分が使い捨ての駒に過ぎないということを。

 

覚束ない足取りでデリヘルを行っているホテルに戻ったまもるは、そこでマミーが兄貴分によって、無残な姿で殺されている現場を目の当たりにします。

そのあまりの凄惨な光景に逃げ出してしまうまもるですが、既に陣内の舎弟が待ち構えていました。どうしたって逃げられないことを悟ったまもる。

 

そんなまもるの元へ、金を徴収しに来た司ですが、まもるから全てを明かされます。

 

「俺、懲役行くんだ。チャカ、弾くことになった。今から、南天龍組の、組長の玉、取るんだわ。これで勲章ゲットだぜ」

「いいように使われてるだけじゃねえか」

「分かってる」

「お前は俺に金を返さなきゃなんねえ。金返せ!」

 「……俺は、ヤクザなんだよ」

 

ああ……、ふたりのこの会話が辛い。

慕うこともできなくなった陣内の命令に、嫌でも背くことは出来ないまもる。司はそんなまもるの心情を、これまでを見てきているからこそ分かるんだよね。

金を貸してるにも関わらず、「逃げちまえよ」と言ってしまう司がらしいというか……。

金貸しと債権者に過ぎなかったふたりですが、これまでのやり取りを通して、ある種友人のような関係性になっているんですよね。

司の良い所でもあり、悪い所だなあ。その性格故に、債権者と親密になりすぎてしまうというか……、3のえりな然り、5の沼岸然りね。

闇金をやる上ではしんどい性格ですよね。それが司らしさ、なんですけども。

 

そんな司に喝を入れるのが忠臣さん。

非情になきれない司の性格を熟知しているであろう忠臣さん。

「金は金だ。命がけで取り戻せ」

しかし、金貸しである以上、踏み倒すことは許されない。

 

忠臣の喝に突き動かされ、司は金を取り戻すために陣内の下へ再び乗り込みます。

金を返させるために、そしてまもるを守るために。

何とか陣内に、まもるへ出した指示(組長を殺させること)を覆そうとする司。

この話の持っていき方は実に司らしいですよね。

しかし、陣内は相変わらず聞く耳を持ちません。

 

「あいつは駒だ。ものはいらねえんだよ」

司に銃を突き付け、追い返す陣内。

 

成す術もなく帰路に着く最中、まもると居合わせる司。

怯えるように、焦るように、それでも意を決したように歩みを進めたまもるですが、警察官に声を掛けられ、逃げ出したがために取り押さえられてしまいます。その手から奪われる拳銃。

 

 「ラッキーーー!!ラッキーーーーー!!!!」

 

まもるは警察官から押さえつけられながら、ただ、そう叫び続けるのでした。

 

これ、警察に通報したのって司かな?と思ったのですが、どうでしょう。

金を返してもらう以前に、まもるを駒としか思っていない陣内からまもるを救うために、最終手段を取ったのかなと。

そう考えると、次の忠臣と司のシーンも頷けるんですよね。警察からの電話に「だから、俺は関係ないっすよ。俺とまもるはただの友達ですから」って返す司に、ああああーー!ってなった。

忠臣から怒られることなんて百も承知で、それでも司は救いたかったんですよね、まもるを。

救えない命がどうしたってあることを、司は嫌というほど学んできてる。トラウマを経て、吐くほど嫌だった闇金の世界に自ら戻ってきた司。

司は自分で、自分は忠臣のようにはなれないことを悟っている。それがいかに甘いことかも。

おそらく忠臣も、それを分かっていて、ある程度は許容している面もあると思うんです。しかし、金貸しである以上、貸した金は何をしてでも取り戻すという根底だけは、覆すことは出来ない。

まもるへ貸した金を、自分の金で補おうとする司に、「いらねえよ」と返す忠臣。

そして向かったのは、陣内の事務所でした。

 

まもるへ貸した金を払えと陣内に迫る忠臣。

「商売できなくしてやろうか?」と逆に脅す陣内に、笑みを浮かべます。

 

「次郎は元気か?」

 

これ……これですよ……。忠臣さんの口からこの言葉聞いた瞬間、鳥肌が立った。

全て知っていたんですね、忠臣は。

次郎が現在、大山彦組系列の南天龍組若頭であり、陣内と結託して、双方の組長を始末し、この辺のシャブの利権を牛耳ろうとしていること。

まもるがデリヘルで使っていたシャブは、全て陣内が次郎から用立てたものだったのです。

画策していた計画を全て悟られてしまっていた陣内は、大人しく金を返すしかないという……。

 

いやーここ本当にヤバかった。

まさか、闇ド9にして、次郎の名を聞くことになるとは……。震えた。

このふたりについては、ちょっと後でまた語ります。

 

そうして、忠臣によって金を取り戻すことが出来た司。

「為になりました」と言う司に、忠臣は朝から道端に座り込んで酒を飲む男に目をやり、司に「あのおっさんを見てどう思う?」と問いかけます。

「アル中でしょ?」と返す司に、今日が月末であることを確認する忠臣。

 

「朝まで仕事して、給料日でお疲れの一杯やってんじゃねえのか?」

「金を貸すなら、ちゃんと相手を見ろ」

 

静かに、しかしハッキリとした口調で諭す忠臣。

何というか……説得力が半端ない。

暴力より堅気の欲望の方が恐ろしいと言った忠臣。かつてヤクザの世界で死ぬほどこの世の裏をその目で見てきているはずの忠臣ですら、恐ろしいと思う、どん底社会の欲望。その世界で生き抜くためには、相手を見抜く能力がいる。

 こをれまでどれだけの修羅場を乗り越えてきたか、それこそ闇金を始めたばかりの頃の忠臣さんを知っているだけに、ここの言葉の重みをひしひしと感じる。

 

そんな忠臣の言葉を噛みしめるように、ゆっくり後を追い歩く司。

うん。まだその距離は近くはないけれど、忠臣のようにはなれないかもしれないけれど。司は司なりのやり方が見えてくるはず。

まだまだこれからだよ、司も。

 

 

いやーここまで、ストーリーを順に追ってきましたが、闇金ドッグス9の何がヤバかったかって、闇ドファンは全員感じたと思うんですが、これどうしたってガチバンの忠臣さんを彷彿とさせる演出にあるんですよ。

 

冒頭に述べたように今回のテーマは「ヤクザ」でした。

今回、童組の準構成員であるまもるが中心となって物語が進んでいきましたが、このまもるの立ち位置が、まさしくガチウルにおける忠臣さんなんですよね。

兄貴分(まもるの場合は親父)を慕う準構成員であり、シャブをきっかけに、人を殺す決断を迫られるという立場に追い込まれていく展開。

きっかけやラストの展開など、違う点も多くありますが、それでも意図的なものを感じました。

 

そして、語らせてください……。

ガチバンから闇ドへ繫がる唯一の存在である次郎の登場についてですよ!!

予告見た時あの一瞬の登場シーンに「うえ!?」って叫んだよ。次郎は今の忠臣を形成する上で、兄貴に次ぐほど、大きく影響を与えた存在だと思うんですよ。

準構成員に過ぎなかった忠臣が組長に登り詰めるまでの経過を知っている唯一の存在でありながら、忠臣が闇金の世界に足を踏み入れるきっかけとなった、まさにその裏切りの張本人。

忠臣は、次郎のその後(闇ド以降)をちゃんと知っていた。(仕事上情報収集は必要なんだろうけど)

そして、そんな次郎が何を画策しているかを、ドンピシャに当ててしまうというね……。次郎が今どんな立場でどんなことをしようとしているか。それは、長い間ずっと一緒にいた事がある忠臣だからこそ、悟れたことなんだろうと……そう窺えた瞬間もう、頭抱えました。

元組長と、その元舎弟。その舎弟は組長を裏切り、今となっては方や闇金の社長で、方や組の若頭。何という関係性なんだ本当……。

忠臣と次郎については、またもうひと悶着ありそう。直接ふたりが対峙する何かが、ね。(それこそ、そのきっかけにはボーダーラインが絡んできそうな気もする)

 

ここまで考察してね……思うことはただ一つ。

前回の記事でも書いたんですが、闇金ドッグスほど“時の流れ”を感じさせる作品ってないんですよ。過去を経て、今を経て、そして今後をここまで考察させる作品なんですよ。

ガチウル、ガチジェネ、そして闇金ドッグスシリーズ。

安藤忠臣が登場してから、既に11作品が世に出ました。遂には、その世界線に絡んでくるボーダーラインという作品まで登場しました。

これほど愛されている作品。それは他ならぬ安藤忠臣という存在を生き抜いた山田裕貴さんという役者の力、そしてそのきっかけを与えた下さった監督さんはじめとするスタッフの方々がいたからこそ、だと思うんですよ。

 

今回出られていた演者の方々、ひとりのみならずいろんな方が、「闇金ドッグス観ました!」というツイートひとつずつにファボされていました。

これまでそういう現象って、(気づいてないだけかもしれませんが)あまりお見掛けすることってなくて。

前にも言いましたが、闇金ドッグスの演者の方って本当に素晴らしい演技をされる方ばっかりなんですよ。そして、作品を心から愛して下さる方が多い。

 

今回、この闇ド9を観終わった瞬間に、いろんな感情が溢れる中で、叫びましたよ。

やっぱり、闇金ドッグス大好きだ―!!!

 

9まで続いてきて、つくづく私の大好きな作品だと再認識させてくれた。

感想も考察も捗る捗る。本当に、いろんな事を考え、感じさせてくれた。

そんな唯一無二の作品なんですよ。

 

今作品は、劇場で公開されることはありませんでした。

けれども、たくさんの闇金ドッグスファンが、DVD発売、レンタル開始の発表に歓喜したのは確かな事実で。

私は山田裕貴さんのファンだけれど、ファンという理由だけで作品を買ったり、レンタルを借りるわけじゃない。

もちろん、それも一つのきっかけかもしれないけれど、でも何よりその作品が面白い、と感じなければ、こんなにも愛される作品にはならないと思うんです。

 

今回、闇金ドッグスの面白さを改めて認識しました。

闇金ドッグスファンになって、毎作品面白いと思ってきたけれど、それをシリーズで見てきたからこその、今回感じ得た面白さ。

「なんだこの作品は……!!!!」と思わず唸りました。またガチバンから順番に見直したくなる。

 

これまでも、そしてこれからも。

あらためて、最後にもう一度言います。

 

やっぱり、闇金ドッグス大好きだ―!!!

 

「闇金ドッグス8」感想と考察

ご無沙汰気味な「闇金ドッグス」の感想と考察。

実は「闇金ドッグス3」と「闇金ドッグス4」の記事が、下書き段階ではありますがあったりします。

本当は順番に記事を仕上げて載せていくつもりだったのですが、今回は「闇金ドッグス8」の記事を先に挙げることとします。

闇金ドッグス8」の公開に至るまでの件に関して、個人的にいろいろと吐露したい気持ちはあるのですが、ひとまずは作品の感想と考察から。

ネタバレありますので、ご注意ください。

 

【あらすじ】

闇金を題材に欲望うずまく裏社会に生きる人間たちを描いた山田裕貴主演の「闇金ドッグス」シリーズ第8作。若くしてヤクザの親分になり、稼業引退後に闇金の世界へ足を踏み入れたラストファイナンスの社長・安藤忠臣は、元イケメンホストの須藤司とともに一癖ある債務者たちを追い込む毎日を送っていた。常連客の湯澤賢一は受給された生活保護費のほとんどをパチンコなどで散財し、困ればラストファイナンスで借金を繰り返していた。一方、シルバー人材派遣会社の役員としてまじめに働いている賢一の息子・章太郎は仕事のトラブルからのストレスで脳卒中を患い、こん睡状態となってしまう。労災保健が給付されることを知った賢一たちは、大喜びで派手な生活を続けていた。そんな湯澤家の人びとから借金を回収するため、忠臣がある策をめぐらせる。

 

 

前回の「闇金ドッグス7」では忠臣の相棒である司が、ある一件から闇金稼業に嫌気が指し、忠臣から一旦は離れたものの、最後には戻ってきたところで終わりましたね。

紆余曲折ありながらも、司は司で折り合いをつけて、忠臣の元へ戻る決断をしたのだろうと思います。

 

闇金ドッグス4~7までは、どちらかというと忠臣の過去や、司の闇金稼業への向き合い方などを重点的に取り上げたストーリーでしたが、前回の7をひとつの区切りとして、今回の闇金ドッグス8は、闇ド無印を彷彿させるような、“これぞ闇金ドッグス”と言わんばかりのストーリーになっています。

何といっても映画のキャッチコピーが「一家全員、下衆。」ですからね。

これまでのシリーズに出てきた債権者たちも、一癖も二癖もある人間ばかりでしたが、今回の債権者たちは歴代トップだろう下衆さです。キャッチコピーに二言はない。

 

今回出てくる債権者は「家族」。シリーズ初の家族全員債権者パターンですね。

生活保護に味をしめ、国の制度を利用するだけ利用している湯澤一家。働きもせず、1人月10万で、家族3人分月30万の生活保護を受け取っています。

父である健一は連日パチンコ通いで、妻娘も家でぐうたら生活を送る日々。生活保護でありながら、振込当日の夕食にはすき焼きという贅沢っぷり。

それでもある分だけ使ってしまうのか、お金が足りずに忠臣のラストファイナンスで借金を重ねているという実態。

懲りずにお金を貸してくれという健一に「お前の生活を思って、俺は貸さないでいてやってるんだぜ」という忠臣さん。

しかし、健一は「資本主義において、俺は使われる側から使う側になったんです」「税金払ってないなら、安藤さんからは搾取しておりません」「だからお金を貸してくださいよ」なんて、悪びれもせず講釈を並べ立てます。

そんな健一の様子に司は終始呆れ気味。しかし忠臣はそんな健一に追い貸しをします。

「よくあんなのに追い貸ししますね。絶対パンクしますよ」と司は言いますが、忠臣はただ含みを持たせた笑みを浮かべるだけです。

 

この会話上で、健一が述べた「アリとキリギリス」の話。今回の物語の上でひとつの重要なキーワードのような気がします。その後も何度か出てくるんですよね、このワード。

「アリとキリギリス」は“先のことを見据えて今を一生懸命に働くアリ”と、“先のことを考えずに今ある楽しさを選ぶキリギリス”の対比から、教訓を示す童話です。(結末は諸説あるようですが)

 

忠臣との会話で、自らを「キリギリス」と表現した健一。生活保護を受けていることを、「私はいっつまでも、キリギリスとして生きることができるんでーす!」なんて物言いで表現する。

つまり健一は、本当は働けるにも関わらず、一生生活保護受給者として楽して生きるキリギリスであり続けると、平然と言ってのける人間なんですよね。そしてこの健一の妻である佳代子も、娘である美穂も同様の考え方。

しかし、この家族に囲まれながらも、唯一「アリ」として懸命に生きる人物がいました。健一の実の息子である章太郎です。

章太郎は、大学卒業後に大学時代の先輩と共に派遣会社を立ち上げ、営業としての仕事をばりばりにこなす湯澤家唯一の常識人。

きっと働きもせずに生活保護を貰い続ける親に嫌気がさして、自分はこうはならないと必死に勉強して、今の職に就いたのだろうと思いますが、とはいえ完全に健一たちと縁は切っていない様子。

仕事終わりに派遣社員から貰ったピザを健一たちの家に届けに行き、偶然鉢合わせた忠臣に、父親に代わってお金を払うし、「働こうよ」と諦めずに家族を諭すし、帰り際またお金を渡すし……反面教師というやつかな。なぜこの父親からこんないい息子が……と頭抱えるレベルでいい子です。忠臣さんも「親孝行な息子だな」って言っちゃってるしね。

けれど、そんないい息子に対して家族は逆に「親不孝な子だね」と平気で罵る。働いてしまっては、生活保護を打ち切られるじゃないかと。章太郎の必死の説得も、全く意に介しません。

 

親にお金を集られながらも、家族として過ごした思い出を忘れられず、いつかあの頃みたいに、と縁を切れない章太郎。しかしそんな彼に不幸が舞い込みます。

派遣した社員が職場で問題を起こし、500万もの損害賠償請求を被ることに。損害賠償保険も書類の不手際でかけれておらず、立ち上げたばかりの3人しかいない会社では易々と準備できる金額ではあるはずもなく。

何とか3人である分を出し合い、章太郎も夜を徹して金策に駆けずり回りますが、なかなか500万には到達しません。

藁にもすがる勢いの章太郎は、遂に忠臣の元を訪ねます。

土下座までして、お金を貸してくださいと懇願する章太郎ですが、忠臣は「貸せない」と一蹴します。

司は思わず「いいじゃないですか。あの親父よりよっぽど頑張ってるじゃないですか!」と援護しますが、忠臣は聞く耳を持ちません。

 

「クズみたいなキリギリスには貸せるが、保障のないアリには貸せない」

 

闇金という絵本の世界ではそれが道理。

アリとキリギリスの例えがここでも使われていましたね。この台詞に例えの秀逸さを強く感じました。子供に絵本を通じて教えを説く童話。その物語が、本来交わることのないはずの闇金の世界で例えに使われることで、矛盾と皮肉がうまく表現されているなあ、と。

 

話を戻しまして。

忠臣に断られてしまった章太郎は憔悴しきった様子で職場に戻りますが、先輩ふたりが更に足りない分のお金を工面していました。しかし、安心したのもつかの間、連日の強いストレスが影響してか脳卒中で倒れてしまいます。

(この脳卒中で倒れるシーン。緊迫感が凄かった。タモトさんの演技が光っていました)

 

結果、寝たきりの植物人間のような状態になってしまった章太郎。

親のようになるまいと懸命に働いていたのに、結果動けずに実家に戻る羽目になってまうなんて、何て悲惨なんだ……。

この章太郎の件がきっかけとなり、湯澤家の下衆っぷりが一層際立つようになります。

動けない章太郎がいることで手に入ったお見舞金や労災保険金、傷害年金。一気に受給額が増えたことで、湯澤家のお金への欲は更に高まっていくばかり。

パチンコに、海外旅行に、占いに、ネイルに……。湯水のようにお金を使い果たしていきます。

更なるお金を求めて、忠臣の元を訪れた健一たちに、次々と追い貸しをしていく忠臣。

「誰か借りるか」と投げた一万に群がる家族の姿に、忠臣は思わず笑いを零します。

このシーンは、山田さんがインタビューでも語っていましたね。非常に印象的なシーンです。

 

人の欲は計り知れない。どんどん膨らんだ湯澤家の借金を返させるため、人を紹介するという忠臣。

「国の制度を使えばいいだろ。そうすりゃもっと、金入ってくるぜ」

これまで散々国の制度を利用してきた湯澤家に言い放ちます。その視線の先には、世話もされず、ただ受給のためだけに生かされる章太郎の姿が。

忠臣の言わんとすることを察した健一たちは、一気に表情を曇らせます。

何て顔してんだよ、と笑う忠臣。

 

「故意にってこと……?」「事故だよ、事故」

 

このシーンの忠臣さん、闇ド無印の良夫に諭すシーンを彷彿とさせましたね。

忠臣が闇金稼業を始めて、それまで何でも暴力でねじ伏せてきた忠臣が言葉で促した、初めての取り立てでした。

微笑みながら諭すように「ヒーローにならなきゃ」と言ったあのシーンは、今思い出しても鳥肌もののシーンです。

 

そうして忠臣の助言をもとに、形振り構わずお金を手に入れようと、お互いに足を引っ張りあう健一たち。

障害年金を手に入れるために、両親そろって娘に手をかけると思いきや、妻の佳代子は健一を騙し、事故を装って怪我をさせ、保険で大金を手に入れたのでした。

その事故の一旦を担ったのもまた、忠臣の債権者である佐竹。忠臣が佳代子に紹介したのは、この佐竹だったわけですね。

 

こうして、佐竹と佳代子を協力させ、それぞれの借金を返済させた忠臣。

直接指示したわけではないにしろ、佐竹を紹介した時点でこうなること(故意に事故を起こして、金を返させる)は見越していたはず。また同じことやりますよ、と危惧する司に対し、忠臣は「今後は貸さない。これ以上首つっこんだら手錠になる」と諫めます。

 

闇金稼業において引き際は重要。

欲が嵩み、リミッターがおかしくなってしまっている佳代子と美穂。その家には死んだように生かされ続ける、健一と章太郎。

この家族の行く末は、忠臣の言うようにこれ以上はどう転んでも地獄なのだろう。それを象徴するかのようなラストカットでした。

 

「一家全員、下衆。」

冒頭も言いましたが、本当にこのキャッチコピー通りの家族でした。一貫して下衆でした。救いも何もあったものではない。

 

闇金ドッグスの世界における「アリとキリギリス」は、どちらの生き方が良いと示されることは恐らくないのだろうと思います。そもそもの題材が「闇金」ですからね。その時点で世界が違う。

アリが最後には報われるわけでも、キリギリスが後になって「懸命に働いていればよかった」と後悔することもない。

真面目に働くアリも救われず、今は笑っているキリギリスも向かう先は地獄一択。

これぞまさしく闇金ドッグス。そうつくづく思わせてくれた作品でした。

 

物語を通して印象深かったのが、忠臣さんの笑うシーンが多かったこと。

シリーズ通してみると、忠臣さんが笑うシーンって本当に数少ないんですよね。債権者の前で、含みを持たせるように口角を上げることくらいはあったけれど、今回のように歯を見せるような笑い方って、それこそ闇金ドッグス4の豊田さんの前で笑った時以来じゃないかな。

ただ、司のビビりように笑った冒頭のシーン以外は、債権者のあまりの滑稽さに零れ出た笑いだったんですよね。

山田さんもインタビューで述べられていましたが、以前は割とどんな客にも割とフェアな態度だったように思うんですが、今回は確かに“搾取する側”としての振る舞いも垣間見えた。

 

今回の物語では「アリとキリギリス」「資本主義」「支配する側・される側」といったキーワードが特に印象的に使われていたように思うんですが、ふと思ったのが、忠臣さんの立ち位置ってどこなんだろうと。

闇金業者として裏の世界で生きる忠臣さんは、アリでもキリギリスでもない。資本主義における搾取する側であるのか、される側なのか。それでもない気がする。

 

非常に曖昧な、グレーな世界で忠臣さんは生きているんですよね。それは闇金を始める前から、ヤクザとして生きていた頃からだと思うんですけど。

忠臣さんは、登場人物の誰よりも自分に無関心であるように思う。ヤクザの組長であっても、闇金稼業の社長であっても、自分が社会における底辺、グレーの世界で生きていることを知っている。

ガチジェネの斗氣雄や司が葛藤した「何のためにヤクザなのか」「何のために闇金の世界で生きるのか」という問いに、忠臣さんはそれこそ10代から向き合っていた。むしろその世界でしか生きてこなかったからこそ、ある意味公平な立場でいられた気がするんですよね。

だからこそ、今回忠臣さんが見せた振る舞い(債権者に対して見下すような笑い)は、確かに忠臣さんが今後向き合うべき「闇」となりうるのかもしれない。

 

そんなことを考察して、つくづく安藤忠臣は生きてるんだなあ、と実感しました。

シリーズ8作目。忠臣さんが闇金稼業を始めてから、もう何年になるんだろうか。司が「忠臣さんほんっと物知りっすよね」と感心するほどの知識量になるまでに、何人もの債権者との修羅場を乗り越えてきたんだろう。

このシリーズは本当に時間の経過を随所に感じさせてくれる。

 

闇金ドッグスは主演含め、いつも本当に魅力的な演技をされる役者の方ばかりで。

脚本も、演出も、演者が見せる表現も。全てが交わって、この闇金ドッグスの世界を生み出し、更にこの世界に生々しさを与えているんだと。

 

今回、「闇金ドッグス8」の公開に至るまでに、いろいろありました。

いろいろありましたが、一週間の限定での劇場公開に加え、何とかレンタルという形でこの作品を観られたこと、一ファンとして心から嬉しく思います。

この先のことは何も分かりません。まだ、この件に関して自分の中でも消化しきれていないことがたくさんあります。そのため、毎週のように観ていたこのシリーズからも、しばらく距離を置いてきました。

けれど、DVDレンタルが開始になることを知り、分からないからこそ、まずは観てみようと思いました。

 

 

観終わって、この作品への思いがたくさん溢れました。その思いを言語化するのに、とても時間がかかりました。正直、まだまだ書ききれないことがたくさんあります。

 

でも一番に思ったのは、私はやっぱり、この「闇金ドッグス」という作品が大好きなのだなあ、と。

 

願わくばこれからも、この世界を、安藤忠臣の今後を観ていきたい。

一ファンが思いを述べたところで、とは思いましたが、今回作品を観て、一ファンだからこそ、一ファンとしての思いを残しておきたいと強く感じました。

 

一般人である私には知り得ないたくさんの壁もきっとあるのだろう。

ただそれでも、このシリーズが愛されてきたからこそ、たくさんの方々の尽力があったからこそ、ここまで続いてきた作品なのだと思う。

 

そのたくさんの方の愛と思いが、まだ知らぬたくさんの方々に届きますように。

このシリーズの一人のファンとして、これからも応援しています。

 

 

「闇金ドッグス2」における安藤忠臣についての感想と考察

こんばんは。
前回から間が空いてしまいましたが、今回も懲りずに考察していきます。
果たして需要あるのか?と思うけれど、何より自分の中で燻っている闇金ドッグス熱をどうにかしたいので、とりあえずは文章にして落ち着こうと思います。
皆さんに、もっと闇金ドッグスを知ってほしい。んで、嵌ったら考察感想を書いてほしい。その時は喜んで読みに行かせて頂きますm(__)m

 

ということで、今回は「闇金ドッグス2」についての感想と考察をしていきたいと思います。


個人的に「闇金ドッグス」の実に闇金らしい、あのラストの後味の悪さは嫌いじゃないのですが、恐らく好き嫌いが分かれてくる、もしくは、ああいったテイストの話が苦手という方もいらっしゃると思います。
闇金ドッグス以外で山田裕貴さんを知った方は、ファンとして観たいけれど怖くて観れない……という方も少ないのでは?
そんな方々にお勧めしたいのが、この「闇金ドッグス2」から観始めること。
後の「闇金ドッグス3」もそうなのですが、「闇金ドッグス」と比較するとかなりマイルドになっています。(当社比なので違う場合は悪しからず)
闇金ドッグス2」から観始めて、この雰囲気になれてから、ガチバンシリーズ→闇金ドッグスという順番で観ていくと、話の流れが分かりやすいかなと思います。

 

前置きが長くなりましたが、そんなこんなで結構観返す頻度が多めの「闇金ドッグス2」。
ネタバレしまくり&毎度のことながら、勝手気ままな考察していますので、その点ご了承ください。

そして毎度のごとく超絶長いです。すみませんm(__)m


ではまずは、あらすじから。

 

【あらすじ】

闇金稼業も板についてきた元やくざの組長・安藤忠臣(山田裕貴)は、債務回収先で偶然再会した中途半端なイケメンホスト・須藤司(青木玄徳)を雇い、順調に闇金企業“ラストファイナンス”を回していた。そんなある日、毎月元金まで返済する常連の優良顧客・岡林(黒田大輔)から、追加融資の相談を受ける。付き合っている場末のスナックのママ・あざみ(伊藤裕子)から、母親の手術費で200万円が必要だと言われたらしい。返済能力を超えた金額に躊躇する安藤だったが、今までの実績を信じて条件付きで200万を貸す。だが、稚拙な資金繰りは上手くいかず、岡林は行方をくらましてしまう。焦った安藤は、岡林の言葉を思い出してあざみの元を訪れる。ところが、あざみはとんでもない曲者だった……。

 

 

さて、では早速考察と感想を。

 

始まりはどこかのスナックでのシーンから。客の突然死?に動揺するママと客(と思われる)が描写され、物語は始まります。

 

常連客の岡林と談話する忠臣さん。お金数える姿が様になってるよ……。(何目線だ)

この岡林、オープニングシーンで出てきた客ですね。今回の物語のキーとなる人物で、毎回きちんと元本含めて借金を返済する優良顧客のようです。

 

場面は変わって、今度は返済が滞っている客の元へ向かう忠臣さん。

取り立て先には、先客がふたりいました。

他社取り立て屋と、中途半端なイケメン面でお馴染み(実際はかなりのイケメンですよ)の須藤司です。

はい。出てきました司くん。彼の初登場は「闇金ドッグス」(詳細:

「闇金ドッグス1」の感想と考察 - ガールズブルー)でしたね。いやー、彼がまたいいキャラしてるんですよ。まあ、彼についてはまた後ほど触れるとして。

 

どうやら二人とも、忠臣同様取り立てに来た様子。どちらが先に取り立てるかで揉めています。(小学生の喧嘩かよ)

司に「俺のバックには大山彦組の有藤さんがついてるんだよ!」と粋がるスキンヘッド(仮称)。

ああ……よりによってその組の名前出しちゃう??

そんなスキンヘッドの肩を優しくポンポンと叩き、「有藤と知り合いか」と微笑を浮かべ問うのは忠臣さん。うん、怖い。

「ああ!?クソガキが……ぶち殺すぞっ」って言い切る前にビンタお見舞いされるスキンヘッド。案の定でしたね、ご愁傷様。

「有藤に電話してみるか。有藤がバックなんだろ?」と電話をかけようとする忠臣さんに動揺しまくりのスキンヘッド。最終的に「マニュアルです!すみません」と謝りながら逃げ去ってしまいます。

相手が悪かったね、スキンヘッド。まさか、目の前に大山彦組の元組長がいるなんて知る訳ないもんね。どんまい。

 

そんなこんなで呆気に取られていた司を横目に、忠臣さんは債権者に取り立て開始。

(余談1:この冒頭シーンで忠臣が「別所さーん」と呼ぶ声がやけに可愛い)

最初は穏やかな口調で話しつつも、返す気がないと分かるや否や、息子の会社に電話をかけて脅します。それに焦る債権者に「今回は利息だけでいいんだから」と優しく促し、しっかり取り立てる忠臣さん。

この飴と鞭の使い分けよ……。「闇金ドッグス」でのラストの取り立てを彷彿とさせた。暴力と怒号に訴えた取り立てより、よっぽど怖いわ。

(余談2:「利息だけでいいんだから」と詰め寄る忠臣さんの表情がめっちゃ色っぽい。怖いけど色気ある。どういうことだ。あと、よく見ると瞬き全くしていない。山田さん凄い)

 

そんな忠臣の取り立ての様子を見ていた司。ちゃっかりラストファイナンスまで着いてきてます(笑)

司はひまわり金融から借りた金の返済ができず、取り立てのバイトをさせられていました。

 

さて、一旦ここで須藤司について触れますね。

前作の「闇金ドッグス」で登場した彼。忠臣が借金返済のために、小中に言われて債権を買った債権者がこの須藤司でした。

小中に「その中途半端なイケメン面がお前の担保だ」と言われた元ホストの女たらし。

司は小中に言われ、借金の返済をするために、何人もの女性と結婚・離婚を繰り返し、名義変更することで、町中の闇金から金を借りまくっていました。

しかし、面が割れ、今ではお金も借りられず、返済も滞っているという現状。

 

そんな状態の司は忠臣に「お金貸してくんね?」とお願いするも、「馬鹿かお前は」と一蹴され、追い出されそうになりますが、店の前には女性客が……。ここで司が才能を発揮。

忠臣の怖い雰囲気に、お金を借りたいと言えない女性客。しかし、司が元ホストの才能を活かし、甘い言葉でお金を借りさせます。

その様子を見た忠臣は、顧客取り込みに利用できると踏んで、司をラストファイナンスで働かせることにします。

これが功を奏し、司の電話には女性客からの電話が後を絶たず……。その様子を見てしたり顔の忠臣さん。うん。可愛い←

 

順調に客を獲得していく司は「俺これ天職かもしれないっすわー!」と上機嫌。

「ホストの方が儲かるだろ」と返す忠臣に表情が曇る司。

司はホスト時代に仲間に嵌められ、借金を背負ってしまったことを忠臣に明かします。

「俺つくづく思ったよ……仲間なんて言葉は嘘っぱちだって」

そう言いながらも、「なんちゃって」とはぐらかす司。そんな司を見る忠臣の表情は複雑です。

思うに、忠臣はこの時初めて司に同調したのだと思います。“同情”ではなく、あくまで“同調”。

忠臣は司の話を聞いて、自分が裏切られた瞬間を思い出した。ただそのことを悲観しているわけではなく、何の接点もないと思っていた司が、自分と共通の念を抱いていたことを知り、それが忠臣の司へのガードを緩める一つのきっかけになったのかな?と。

「ま……野良犬みたいなもんすよ」と自嘲する司を見やった後、目を伏せ煙草を吸う忠臣の目が完全に“無”でした。

前回の考察でも書きましたが、ちょいちょい出てくる忠臣さんの“無”になる瞬間。毎度このスイッチの切り方が印象深いんですよね。電話がかかってきて、我に返るような仕草の演じ方、山田さんさすがだなあ……。

 

シーンは変わって、スナックで話すあざみと岡林。

あざみ(スナックのママ)は母親の手術費のために200万必要になったと涙し、彼女と結婚するつもりでいる岡林は、どうにかあざみのために金を用意できないかと忠臣の元を訪れます。

この時何故か両手で指を鳴らす忠臣さん。え?どうした??(笑)岡林は優良顧客だから、気が緩んでいたのか??

だからこそなのか、いきなり岡林が「200万貸してください」とか言い出すもんだから、呆然とする忠臣さん。そりゃそうだ。

女のために金を借りる岡林に少し訝し気な忠臣ですが、これまできちんと返済してきたことを踏まえ、「10日後に利息含め260万、一括で返せるなら貸してやる」と200万を差し出します。

その200万を、買ってきた御守りと一緒にあざみに渡す岡林。あざみは岡林に泣いてお礼を言い、「お母さんが治ったら紹介させて」と笑みを浮かべるのですが……。

まあ、そのお金をどうしたか…というのは想像通りでした。

あざみは岡林のみならず他の客をも騙し、金を巻き上げていたのです。

あざみは大学生の一人娘がいました。ライトノベルが好きな、大人しい印象の子です。大学生だというのに、門限を守りなさいやらお昼は家で食べなさいやら、頻繁に電話をかけてる所を見るに、まさに娘を“溺愛”している。

娘のためにひたすらお金を貯めるあざみ。お金を得るためならば手段を選びません。

岡林はまさにそんなあざみの恰好のターゲットだった、という訳ですね。

 

そんなこんなでまんまと騙され、200万円をあざみに渡してしまった岡林ですが、案の定返す充てがなくなり、勤めている居酒屋の売り上げ改ざんしようとするわ、レジのお金盗もうとするわ、もう散々です。

 

そんな頃、忠臣さんはというと、200万円を貸した岡林からの返済が遅れイライラ。その上、ひまわり金融の差し金で司を利用され、100万円を奪われてしまいます。しかも、司はその責任逃れのために忠臣から逃げ出す始末。

信用していた顧客からの返済はなく、取り込んだ司からは100万円盗られた上挙句に逃げられる。

闇金稼業が順調だっただけに、この状況に苛立ちを隠せない忠臣さん。

「舐めてたのは、てめえじゃねえのか?」と鏡に映る自分を鏡ごと殴ります。

なんだか「闇金ドッグス」を彷彿とさせますね、このシーン。よれよれのワイシャツで路地にうずくまりながらも、光を失わなかったあの時。

忠臣さんって本当こういう時にこそ、力を発揮するというか。追い込まれてからの巻き返しが凄いんですよね。

 

忠臣は金を回収するため、岡林を探し回り、その道中で岡林が結婚すると言っていたスナックのママの事を思い出します。

岡林の足取りを掴むため、スナックへと向かった忠臣は、そこであざみが岡林と結婚するつもりなどないこと、そして一人娘がいることを知ります。

その後、岡林を見つけ出し、金を返せと脅すのですが、まあこの時の忠臣さんが怖いったらない。

笑いながら道路に突き落とそうとするわ、「260万くらい腕の一本落とせば何とかなるんだけどな」とかさらりと言っちゃう。

こういう時の忠臣さん、完全にスイッチ入ってますよね。もうこいつ金返す気ないな、って分かった瞬間、本当に容赦ないというか。このあたり、さすが元組長というべきか。腹の据わり方が違う。まあ、それでも、脅すだけだし(めっちゃ怖いけど)、返す方法提示してる時点で大分優しいと思うけどね。ひまわり金融とかもっとえげつないことしそう。

 

そんな岡林に金を返させる方法として、保険屋を紹介するつもりだった忠臣ですが、その話を進めていくうちに、岡林に多大な保険料がかけられていることが判明します。それをかけていたのは、スナックのママ、あざみでした。

忠臣は、あざみが保険金目当てで岡林に近づいたのではないかと疑いますが、岡林は聞く耳を持ちません。それどころか忠臣に逆切れする始末。それまで怯えて逃げ回っていたのにね。

ここの逆切れショー、岡林役の黒田大輔さんの演技が光っていました。なりふり構わず、靴を振り回す岡林と、表情一つ変えずにただ避ける忠臣の対比が、追うものと追われるものを明確に示しているシーンというか。

 

岡林は忠臣を振り切り、あざみの元へ向かいます。

あざみは岡林に甘い言葉をかけますが……もちろん狙いは保険金。手慣れた様子で毒を盛り、殺そうとするあざみ。

そんなあざみから、命からがら逃げ出した岡林は、待ち構えていた忠臣に「殺されそうになった」と泣きつきます。

「どうすればいいんですか?」と縋る岡林。そんな岡林を冷たくあしらいながらも、安藤はお金をだまし取ったあざみから金を取り戻す方法を考えます。

思いついたのは、あざみの一人娘を利用すること。そのために、逃げ出した司を見つけ出し、「仕事を紹介してやる。成功報酬100万だ」と持ちかけるのです。

 

お金借りている身で逆切れした挙句、身の危険を感じたら調子よく助けを求める岡林。

自分のせいで忠臣に100万の損害を与えたにも関わらず逃げ出した司。

そんなどうしようもない二人に忠臣さん、ちゃんと金返す方法考えてあげてる……優しくない? まあ、ふたりを利用して金を回収することが目的なんだろうけどさ。ひまわり金融だったら、もっとえげつないことしそう。(本日2回目)

 

 さてはて、こうしてあざみから金を回収するために、ふたりを利用した策を実行する忠臣。

司をあざみの娘であるななみに近づかせ、気を持たせた上で、百貨店の職員を装った岡林から、2000万円もの指輪を購入するお金を出させることに成功します。

ななみが司のためにと支払ったそのお金はもちろん、あざみがこれまで保険金殺人で溜めてきたもの。

憤ったあざみは、ななみを引き連れラストファイナンスへ乗り込みます。

警察に通報すると訴えるあざみですが、忠臣はあざみのこれまでの所業を全て調べ尽くしていました。ここで通報でもしようものなら分が悪いのはあざみも同じ。

そして思いもよらぬ所から援護射撃が。あざみが愛してやまない娘のななみも、母親がこれまで人を殺してきたことを全て知っていたのです。

そんなあざみを、内心軽蔑していた娘に「あなたのために殺してきたんじゃない」って言っちゃう母親…。うん。あざみさんも随分前から壊れていたんだなあってこの時思った。娘しか縋るものがなくなり、依存してしまった。それはもう、娘のために人を殺すのも厭わないほどに。

「ななみを生むのに38時間もかかったのよ……?おなか痛かったけど、あなたの愛を必死に受け止めたの」と涙を零すあざみに、ななみは容赦なく「私は私の人生があるんだよ!」と声を荒げ、出て行ってしまいます。娘を一番愛していたあざみは、打ちひしがれますが、そんなあざみに「終わったか?」と冷静に返す忠臣。

 

ここの親子の会話。忠臣と司はどんな気持ちで聞いてたのかなって、少し考えてしまいました。その人の性格の根底にあるものって、やはり幼少期の経験だと思うんですよ。ななみも自分に依存し、自分のために父親すら殺す母親への葛藤は、これからも続くだろうし、忠臣と司もそれぞれに抱えるものがあるから。

 

最後の悪あがきに訴えてやると脅すあざみですが、忠臣は全ての会話を防犯カメラで録画していました。こうなるともうあざみに成す術はありません。

 

こうしてあざみから2000万円を奪い取ることに成功した忠臣。

忠臣は元本と利息、経費含め500万円と、司への報酬100万を引き、残りを全て岡林へ渡します。戸惑う岡林に驚く司。しかし当の本人は素知らぬ顔です。

「何であいつに?」と納得いかない様子の司に対し、「俺は詐欺師じゃねえ。金貸しだ」と言い切る忠臣。

岡林は戸惑いつつも金を全て持ち、去っていきます。そして彼の末路はというと……。うん。そうなっちゃうよね、やっぱり。

お金に溺れた人間と、お金に依存した人間の末路。

 

「物騒な世の中だなあ」ってあなたが言いますか忠臣さん(笑)

司とふたり街を歩く忠臣。

そこへ忠臣に、冒頭に出てきたスキンヘッド(大山彦組の代紋語ってた人ね)を捕まえたと、大山彦組の有藤から連絡がきます。

そのやり取りに「元組長って本当だったんすね」と話しかける司。

「何で足洗ったんすか」と聞かれ、「銀行口座も作れなきゃ、車も買えねえ。そんな世界いたって先が見えてんだろ」と忠臣は返します。

 

うーん。前回の感想にも書きましたが、こういう台詞聞くと尚更、忠臣さんは組長の座に固執していなかったことが伺えますね。ただ、その座につくことが兄貴の願いであり、そのためだけに必死になっていたというか。

若い頃からヤクザに身を落として生きてきた忠臣だからこそ、いろんなヤクザの行く末をその目で見てきたんだろうな。だから、組長になったとしても、その行く末をある程度理解していた。

周りから見たら、矛盾の塊だよなあ忠臣さん。ヤクザの果てに待つものを誰よりも理解していただろうに、ヤクザの道を突き進んだ。 

結局は次郎により、その道を自ら閉ざした忠臣だけど、忠臣にとってしてみれば、いつ訪れてもおかしくない結末が早めに来たって感じだったのかなあと。

そんな忠臣さんでも、次郎に裏切られていたことは想定外で、そっちの方が忠臣さんにとっては堪えたんだろうな。

 

 

最後は「ひまわり金融に100万回収しにいくぞ」と。ただでは転ばない忠臣さん。

取られた分はきっちり回収する。なめられたらこの業界やっていけないもんね。

 (余談:ここ忠臣と司が並んで歩いてるシーンなんだけど、山田さんのスタイルの良さに戦慄。顔小さい。脚長い。要注目)

 

うん。一連の流れ書いてて思ったけど、これのどこがマイルド?と言われそう(笑)

しかし、1に比べたらこれでも全然マイルドだと思うんですよ、後味的にね。1が結構なえげつなさだったっていうのもあるけど。

何より忠臣さんの成長が凄いんですよ。だから安心して見れるというか。1の忠臣さんはどん底まで一回落ちるので、それ含めて視聴が辛いんですよね……。

 

だってさ、ガチバンで、メモ書きにすら手こずっていた忠臣さんがですよ? あざみから金を取り戻すために、策を練って、シチュエーションから台詞回し、小道具の準備まで全部しちゃうんですよ!?

たった一文字書くのにもたどたどしかった18歳の忠臣がここまでくるのに、どれだけ努力したんだろうって考えたらもうね……。

若頭補佐(ガチバンニュージェネレーション)から組長時代に相当勉強したんだろうなと思います。若いうえに学もない忠臣が、馬鹿にされないようにただひたすら努力し続けていた形跡が、こういった形で分かるのは、視聴者としてはとても興味深いです。

 

さて、こうして長々と書いてきましたが、個人的に「闇金ドッグス2」好きなんですよね。全シリーズで一番視聴したと思います。何でかなーって考えた時に、多分それは忠臣の成長が顕著に分かるのと、司が加わったことでコメディ要素が増えたこと、それによって忠臣の新たな一面が見れたのが大きいのかなと。

ガチバンから始まり闇金ドッグス1へ続きますが、とにかく話が重いんですよ。誰か忠臣さんを救ってあげてくれ…と願わずにはいられない展開が続くわけです。

そしたら2にして現れたんですね、須藤司が。ただの借金にまみれた調子のいいホスト崩れかと思いきや(酷いw)、忠臣さんにはこういう相方が必要だったんだ!と納得させるそのキャラクター。

 

孤高のアウトローであった安藤忠臣が、須藤司を関わっていくことで、どういった変化を見せるのか。逆もしかりなんですよね。

これからこの忠臣と司のコンビが見せる「闇金ドッグス」が楽しみでならない。そう、次に期待を寄せてしまう、そんな作品となっています。

 

 

最後にもうひとつ余談。

今回の見どころのひとつ。岡林役の黒田大輔さんの演技力が凄まじい。

山田裕貴さんも黒田さんの演技にとても感化されたと、インタビューでおっしゃっていましたが、本当に圧倒されました。

岡林のキャラクターって、何だか誰もがこういう人いる!って言ってしまうような、そんな性格してるんですよ。一見柔和な面立ちだけど、実際はひたすらえげつなくて、弱いのに強がって粋がってしまう。

忠臣に追い詰められた時の不甲斐なさったら、もう凄いんですよ。それを見事に演じきった黒田さん。こういう役者さんを「闇金ドッグス」という作品で知れたことが、とても嬉しかったです。

 

相変わらず長ったらしくてすみません(汗)

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

「ガチバン NEW GENERATION2」における安藤忠臣についての感想と考察

こんばんは。

前回に引き続き、ガチバンシリーズについての感想・考察をおこなっていきたいと思います。

今回、無駄に長いです。相変わらず勝手気ままな考察していますので、悪しからず^^;

 

今回は「ガチバン NEW GENERATION2」についてです。

前回の「ガチバン ULTRA MAX」では18歳忠臣がヤクザで生きる覚悟を決め、最後は慕っていた兄貴分の西口に向けて、銃を放つシーンで終わりました。(詳細な感想・考察:「ガチバン ULTRA MAX」における安藤忠臣についての感想と考察 - ガールズブルー

最後のシーンでは、”忠臣が銃を放った”ということしか分からず、本当に兄貴を殺したのか、その後どうなったのかは不明のままでした。

 

しかし「ガチバン NEW GENERATION2」において、その後の安藤忠臣が明かされることとなります。

この「ガチバン NEW GENERATION2」は”2”との表記通り、「ガチバン NEW GENERATION」の続編です。メインの主人公は、大友斗氣雄という西川口出身の埼京線系金髪ヤンキー。ちなみにNEW GENERATIONの時点で17歳で、”喧嘩は無敵じゃないが根っからの負けず嫌い”というキャラクター設定のようです。

正直に言うと、ガチバン NEW GENERATIONの方は視聴していません。(どんだけ忠臣一筋なんだよ←)ですので、本当に忠臣メインの感想・考察となります。すみません^^;

 

この1と2の時間軸設定としては、期間はほとんど空いていませんね。NEW GENERATIONで騒動を起こした斗氣雄のその後の話…がNEW GENERATION2となるみたいです。ではまず簡単なあらすじから。

 

【あらすじ】

池袋の騒動から北戸田に逃げ帰った斗氣雄。しかし、ヤクザの世界はそう簡単に見逃してはくれなかった。馬場のしのぎを壊滅させた斗氣雄を執拗に追いかける馬場。脅され、池袋に舞い戻った斗氣雄に待っていたのは、中国人の風俗女への日本語教育。覚えの悪い女たちにヤンキー用語を教えまくる。そしてそこには昔世話になった先輩の忠臣が仕切っていた。ヤクザになった忠臣は、斗氣雄にもヤクザになれと誘うが、斗氣雄はにべもなく断る。そんな時、斗氣雄の甘さから中国女が逃げ出す事態に。落とし前をつけなければならなくなった斗氣雄に待っていたのは……。

 

とまあ、こんな感じなのですが。

劇中での忠臣さん初登場シーンは、「闇金ドッグス1」でも出てきた舎弟の次郎との会話から始まります。以下、会話抜粋。

 

「兄貴は今日も、決まってますね。その若さで、頭補佐ですもんね。いや……なかなか身内に拳銃向けられないですよ。しかも、自分の兄貴分にですもんね」

「……どうでもいい話すんじゃねえよ」

 

はい。この会話で「ガチバン ULTRA MAX」での最後のシーンで”忠臣は本当に兄貴を打ったのか”という疑問がはっきりしましたね。

忠臣はやはり西口を撃っていた。(ほぼ確定事項ではあったと思うのですが)その功績でしょうか、異例の若さで頭補佐という地位にまで登り詰めていました。

 

そこで新たな疑問が。ガチバン NEW GENERATION2はULTRA MAXから何年後の話なんでしょう。そのヒントとなるのが、斗氣雄と忠臣が出会うシーンにありました。

二人が劇中で初めて出会うシーンで、斗氣雄は忠臣の顔を見るなり、「安藤先輩は俺が中学の時の先輩なんすよ!」と興奮気味に次郎に話します。

この台詞から察するに、中学で先輩後輩という間柄だった二人。つまり、最高でも2つしか年が変わらないということになります。斗氣雄が17歳という設定なので、忠臣はこの時19歳くらいかな?

しかし、この忠臣さん。18歳の時とは様相も雰囲気もまるで変わっています。頬はこけ、無精ひげを生やし、西口に向けていたような柔らかい表情の片鱗はどこにもありません。この1~2年の間に何があればこうなるんだ……と言いたくなるほどの変わりっぷり。

斗氣雄が忠臣を見て、嬉しそうに「安藤先輩!」と呼びかけるあたり、中学時代はそれなりに仲の良い間柄だったのだと思いますが、そんな斗氣雄に対し忠臣は「立場弁えろ!」と頭を押さえつけ、牽制します。

そして、「お前の中で俺は先輩のままでも、俺の中でお前はただのゴミだ」とまで言い放つのです。そんな忠臣の態度に、驚きを隠せない様子の斗氣雄。そうだよね……。中学時代の忠臣がどんな子だったかは分かりませんが、18歳の忠臣と比べても、明らかに人が変わっちゃってますもん。そりゃ驚くよ。

 

と、その変わりっぷりに驚いていたら、次郎と斗氣雄の会話で、あっけなく忠臣さんの年齢発覚。「19で兄貴だぞ、無理あるだろ」って次郎の台詞。私の推測合っていました。(一生懸命考えた時間返してくれ←)

しかもここで新たな新情報。次郎の「どうやって(忠臣は)ヤクザになったんだ」という台詞に対する斗氣雄が返しが「年少入ってたから……スカウトされたんじゃないすか?」って、……え?ちょっと待って。

忠臣さん年少入ってたの!?

これ結構さ、重要情報じゃない!?あまりにも自然な会話の流れで、大事な

情報入れすぎでしょ。びっくりするよ、本当。

こうなると、いくつの時に入っていたのかという新たな疑問がでてくる訳ですが……。推測ですが、忠臣が高校を3日で中退したのは、これと関係してくるのかな?と。中学卒業後すぐであれば、当時忠臣は15歳。そこから年少に入れば罪状にもよりますが、期間的に16、7歳で出てくることになるでしょうから、何となく時間軸も合うような気がします。

にしてもホント、忠臣さんの変わりっぷりも年齢も、どうでも良くなるくらいの新情報だった。波乱万丈な人生歩んでるな、忠臣さん……。

 

話を戻しまして、次郎と斗氣雄の会話のシーンの続き。

次郎はビール片手に忠臣について語ります。

 

「俺はさ、あの人無理してると思うんだよ。無理あるだろ…いくら勲章もらったって、19で兄貴だぜ?飛び級にも程があるんだよ。俺みたいに地道にやっていかないと、出る杭は打たれるんだよ」

 

この台詞を聞いて、先に「闇金ドッグス」から観ていた私は心底思いましたよ。

お前が言うな。

 

うーん。でもまあ、物言いには腹立つけど、次郎の言いたいことはすごく分かるんですよね。多分次郎に限らず、忠臣の異例の出世に反感を持っていた人は少なからずいたと思う。

何で組長は忠臣を頭補佐にまで昇格させたんだろう。18歳という若さで自分の兄貴分を殺したから? ヤクザの縦社会がどんなものかまるで想像がつかないんですが、兄貴を殺したことが、後に武勇伝として語り継がれていたことを考えると、やはり大きい功績だったのかな。

学も後ろ盾もない忠臣が、あの若さで登り詰めた理由が、”兄貴を殺したこと”の一点に限られるのなら、異様な変わり具合も何だか納得できる気がします。

 

印象深いのが、風俗嬢として働かされる行く末の中国人たちと過ごすうちに、ヤクザとしての生き方に疑問を持った斗氣雄が、忠臣に詰め寄るシーン。

 

「結局ヤクザは、裏で弱い者から金をむしり取ってるだけじゃねえか。そのくせ男だ、義理人情だなんて、笑わせないでくださいよ」

「お前は明日死ねるか?……覚悟が違うんだよ、てめえとは。この世界じゃあな、恐怖って化け物から逃げる未熟な馬鹿は、皆死んじまうんだよ。てめえに覚悟はあんのか」

「……先輩は」

「……俺はその化け物を頭から食ってやったよ。それ食ったらよ、俺はもう昔の俺じゃなくなった」

 

ああ……もう忠臣さん切ない。この忠臣さんしか知らなかったら、心情的にはきっと斗氣雄に加担しただろうと思います。けれど、18歳の忠臣を知っているだけに、この台詞の重さが半端ない。この後のシーンで、それでも女を利用して金儲けするヤクザを軽蔑する、と食って掛かる斗氣雄に、忠臣が言った台詞。

「だったらお前は、あの中国女に何してやれる?」

「優しさや慰めは、あいつらにとって何の助けにもならねえ」

これが、ヤクザで生きてきた者としての、忠臣の答えなんですよね。

忠臣も恐らく、斗氣雄と同じような葛藤はあったのだと思います。しかし、忠臣が言うように”必要枠”として仕事が成立している以上、どうすることもできない現実がある訳で。まあ、それを17歳の斗氣雄に理解しろっていう方が無理な気がするけど。

 

こうして、忠臣に言い負かされた斗氣雄は打ちひしがれますが、追い打ちをかけるように、一番親しかった中国人女性の蝶の売り先が決まってしまいます。

隙をついて逃げ出そうとする蝶に、斗氣雄は必死に「逃がしてやってくれ」と忠臣に頼みますが、忠臣は容赦なく捕まえます。

実は、中国人の蝶は上海でも売春していて問題を起こし、日本に逃げてきて観光客相手に商売していた、という経歴を持っていました。18歳というのも、日本語が分からないというのも真っ赤な嘘。まんまと騙された斗氣雄を「バーカ。これが現実だ。人は人を助けることなんてできない。人は人を食らうんだよ」と嘲笑う忠臣。

これに発狂した斗氣雄は忠臣に殴りかかり、激しい殴り合いに。

最終的にボロボロになりながらも立ち上がった忠臣は、起き上がれない斗氣雄に向かって「地元帰れ。もうこっち来るんじゃねえ」と言い放ち、背を向けます。

 

ここの忠臣の声、劇中で一番優しい声色だったように思います。そして、自嘲するように僅かに口角を上げた表情が印象的でした。(僅かな動作だけど、こういう山田さんの演技本当に凄い)

 

忠臣はヤクザでいる他なかったんですよね。ヤクザとして生きる道しか残されていなかった。だからこそ、父親のように慕っていた兄貴を殺したし、無理していると言われながらも、必死で階段を駆け上っていった。

斗氣雄にはまだ戻れる余地がある。帰る場所がある。それを知っていたから、忠臣は斗氣雄が”こちら”側に来る前に、覆しようのない残酷な現実を教え、踏みとどまらせたのだと思います。

 

闇金ドッグスとガチバンシリーズを観た上で一番感じたことは、忠臣の”自主性のなさ”。

ヤクザの世界に足を踏み入れたのも、母親が履歴書を送ったから。兄貴を殺したのも、勇人の存在が引き金となったから。別に組でトップになりたかったわけでも、そもそもヤクザになりたかった訳でもなかった。

闇金ドッグス1」でけじめとして組長の座を降りることになった時ですら、さほど取り乱さなかったのは、そもそもその座に執着していなかったからではないかと。

 

忠臣さんって、とてつもなく儚い存在で、ふと気を抜けば、いつ死んでもおかしくないくらいには不安定だと思うんです。かといって、自ら死を選ぶほども悲観的でもない。

そんな忠臣が無意識に求めていたのが”生きがい”。それがヤクザの世界だろうが、闇金の世界だろうが、与えられればがむしゃらになって生き抜く。

それが”安藤忠臣”という男。

 

闇金ドッグス1」で兄貴が忠臣に向けて言った言葉。

 

 

「……忠臣。ヤクザはテッペン取ってなんぼなんだよ。俺はテッペン取るぞ。その時はテメエが頭だ」

 

兄貴を殺してからの忠臣は、この言葉を胸に突き進んだ気がします。斗氣雄に言った言葉通り、”化け物という名の恐怖”をひたすら食らい、死ぬか生きるかの狭間で僅か1、2年の間に階段を駆けのぼった。

そりゃ頬もこけるし、無理してるって言われるよね。何かに常に追い立てられるみたいで。

兄貴のあの腕時計を身に着けながら、それこそ戒めのように自分を駆り立てていたのかもしれません。どうしようもなく不器用な男ですよね。本当は縋る存在を誰よりも欲しているのは忠臣さんなのに。

 

忠臣さんって完全に冷酷非情になりきれる人間でもないんだよね。

闇金ドッグス見たら殊更そう思う。

ヤクザの社会でそれこそいろんな地獄を見てきて、中途半端な優しさは誰も救えないという現実を知っているからこそ、債権者に対して容赦ない所もあるけれど、一方で次郎や須藤(闇金ドッグス2以降相棒となる)に対しては、甘さも垣間見えたりして。

この辺はまた闇金ドッグス2以降の感想と考察に回すこととします。

 

やばい。読み返すと毎度のことながら長い。

そしてあまりにも考察が行き過ぎて、引かれないか心配になってきました(汗)

いや、もうこれは人それぞれの感じ方ですからね。仕事終わって疲れてる中、睡眠時間削ってまで書こうとするほど、魅力的な安藤忠臣が悪いんだ← = 山田裕貴さん凄すぎるって話にまたなるんだけどさ。

 

闇金ドッグスを初めて視聴し、はまり込んでから僅か2週間しか経っていないことに、恐ろしさすら感じます(笑)

でもいいの、毎日楽しいから←

 

では、今回はこの辺で。

「ガチバン ULTRA MAX」における安藤忠臣についての感想と考察

 

前回「闇金ドッグス1」の感想・考察を書いて改めて実感したこと。

それは、ガチバンシリーズについて書かないと、安藤忠臣は語れない!これに尽きます。

 

闇金ドッグスシリーズだけでも、物語としてはきちんと成立するし、面白いんですけどね。でもやっぱり、闇金ドッグスの安藤忠臣を作った原点はガチバンシリーズな訳です。この物語がないと、闇金ドッグスの安藤忠臣は作られなかったって考えると、大きいですよね。

 

ということで今回は、ガチバンシリーズの「ガチバン ULTRA MAX」「ガチバン NEW GENERATION2」の感想と考察をしていこうと思います。

今回もネタバレありますので、ご注意ください。

ちなみに、メインの主人公がそれぞれいるのですが、安藤忠臣にフォーカスを当てているので、安藤忠臣(山田裕貴)にメインの感想となります。ごめんなさいm(__)m

窪田正孝さんも陣内将さんも好きな俳優さんなんですけどね←ここまで書いていると本当に終わらなくなりそう汗)

 

まず、「ガチバン ULTRA MAX」から。

【あらすじ】

場末のスナックで用心棒として働いていた黒永勇人は、スナックに遊びにきた大山彦組の組長に気に入られるが、組の構成員・安藤忠臣はそれが気に入らず、勇人と忠臣は事あるごとにいがみ合うようになっていた。そんな中、勇人は、先輩の吉田義男を通じて知り合ったザビエル女学院中学に通う星良と距離を縮めていくが……。

 

簡単なあらすじはこんな感じです。

安藤忠臣の記念すべき初顔出しは、何と18歳。金髪でまだ少し幼さを感じさせる風貌です。(当時忠臣演じる山田裕貴さんは実質23歳な訳ですが、18歳でも全然通用する出で立ち)

闇金ドッグスの安藤忠臣の姿を知っているだけに、この姿にはちょっと驚きました。安藤忠臣沼に陥っていた私は本気で「天使やん…!」と思ってしまったほど。(詳細:

風邪をひいたら山田裕貴さん演じる安藤忠臣に全てもっていかれた話 - ガールズブルー

 

いやでもこれ闇金ドッグスから入った人は誰しもビックリすると思います。しつこいでようが、何度でも言います。ビックリするよ、18歳忠臣さん。

基本的に無感情で無骨なイメージの闇金ドッグス安藤忠臣とは何もかも違います。

 

ヤクザ社会の下っ端として生きる忠臣は、組長や兄貴分である西口に付いて回る日々。親父が毎晩のように通うスナックで、この物語の主人公である黒永勇人(窪田正孝)と出会うわけですが、最初っからいがみ合うふたり。というか、忠臣が一方的に勇人を嫌っているだけなんですけどね。それもこれも、組長が勇人を一目で気に入ってしまったから。

スナック前で組長を待つ忠臣と、スナックの用心棒として立つ勇人。このふたりのシーン、映画の中で何回か同じアングルで登場するんですが、忠臣の幼さが垣間見えるシーンだなと思います。

ちょっとしたことでケチをつけて、すぐに拳を振り上げようとする忠臣。関西風に言えばイキっていると言うんでしょうか。それがいかにも18歳らしい。

 

喫茶店での兄貴分である西口とのシーンは何とも微笑ましかったです。

褒められて、嬉しい感情を抑えきれず、その態度を指摘され怒られれば、すぐに拙いながらも必死でメモを取る。めちゃくちゃ素直でいい子やないか……。

このシーンで、忠臣さんがなぜ18歳にして、ヤクザの世界に入ることになったかが分かります。

どうやら母親が忠臣を組事務所に入れたようです。この時点で忠臣は18歳。高校には3日間だけ通ったという発言があるので、16、17歳の時には既にヤクザの世界に入れられたのかもしれません。そんな母親を忠臣は良くは思っていない様子。忠臣の様子から察するに、厄介者払いされたという感じなのかな。兄貴には「親は親な。死ねとか言っちゃダメな」と諫められますが、忠臣からしてみれば、母親に捨てられたという思いが強いのでしょう。

兄貴との会話でも、親父との会話でも、忠臣がどれだけ愛に飢えているかということが、痛々しいまでに伝わってきます。

ちょっと褒められただけでも嬉しいし、誕生日を憶えてもらっていただけで感極まってしまう。そんな些細なことでも、この上ない幸せだと思っていそうな忠臣。どんな幼少期過ごしてきたのよ……。

 

しかし、その兄貴分が組長の意に反し、薬を流しているということを知ってしまう忠臣。慕っている西口に、薬の流しを手伝えと言われてしまいます。

動揺する忠臣に、諭すように話す西口の台詞が印象的だったので抜粋。

 

「おい、俺ら何のためにヤクザだ。ヤクザの生きる価値ってなんだ」

「……分かんないっす」

「……忠臣。ヤクザはテッペン取ってなんぼなんだよ。俺はテッペン取るぞ。その時はテメエが頭だ」

 

 

この会話の後の複雑そうな忠臣の表情ったらもう……。けれど、後々の展開を知っていると、この会話の内容って安藤忠臣にとって、とても大事な部分な気がしてなりません。これについては追々また話すとします。

 

それと、キーになってくるのが兄貴の時計の話ですね。”男の価値は時計で決まる”という兄貴の教えに、安いながらも腕時計してくる忠臣の素直さ半端ない。しかも、それを自慢げに勇人に指南するわ、でも逆に時計の安さを指摘されてキレちゃうわ、18歳忠臣のピュアっぷりが凄すぎて頭ついていかなかった……。少年期万歳←

 

そんなピュアさ満載の忠臣ですが、物語は彼をどんどん追い込んでいきます。

組長が西口の薬の件を知り、忠臣に西口を殺せと言います。動揺を隠せない忠臣。そんな忠臣に追い打ちをかけるように、組長は「そういや、お前、名前何君だっけな」と……。組長それ絶対言っちゃダメなやつだよ。耐え切れず涙を零す忠臣。そりゃそうだよね。慕ってる兄貴を殺せと言う組長が、自分のこと何も知らない、知ろうともしない人なんだから。生い立ち故に承認欲求が異様に強い忠臣にとって、組長のこの言葉は忠臣を打ちのめすには充分だったでしょう。

しかし、そこで登場するのが主人公の勇人です。勇人は白血病を患う星良(永野芽郁)の治療費のために、組長に何でもするから金をくれと持ちかけます。もともと、勇人を気に入っていた組長は、銃を渡し、西口を始末するよう依頼するのです。

このことが、忠臣と勇人との殴り合いになる決定的なきっかけとなってしまった。勇人は星良のため、何でもするという覚悟をもって拳銃を手にするのですが、それが逆に忠臣の覚悟をも決めてしまうのです。このまま勇人に殺されるくらいなら、自分が西口を殺す、と。

 

こうして二人の殴り合いになるのですが、そりゃもう激しい。闇金ドッグスは喧嘩がメインの話じゃなかったので、少し驚きました。血だらけになりながら殴り合う二人の姿は痛々しくて、お互い守るべき心情があって臨んでいるからこそ、なかなか決着もつきません。

しかし最後は忠臣の執念が勝ちます。必死に忠臣の足に縋りついて止めようとする勇人に対し、忠臣が放った台詞。

 

「てめえの務めじゃねえよ……。目きらきらした男が、つり合いする世界じゃねえんだよ!」

 

ああ、これが勇人と忠臣を隔てる決定打だなと思いました。

ガチバン過去作品を観ておらず、あらすじだけをざっと見ただけなので、憶測になりますが、勇人と忠臣はどことなく似ているような気がします。けれども、勇人は荒れていても堅気として生きる身。忠臣は既にヤクザの身。この違いって結構な差だと思うんですよね。いくら精神的にも未熟であるとはいえ、忠臣のこの言葉は勇人にとっても大きかったんじゃないかと思います。星良を救いたいがために、形振り構わず拳銃を握った勇人ですが、結果としてこの方が良かったのかもしれません。後の闇金ドッグスで、ヤクザから堅気として生きなおす事の大変さが描かれているのですが、完全にとは言わずとも、忠臣はその事を理解していたのだと思います。だからこそ、これはお前の務めではないと声を荒げたのでしょう。ある意味、忠臣にとっても、勇人の存在はヤクザ社会を生き抜く覚悟を持つきっかけとなったのかもしれません。それが良かったのか悪かったのかは分かりませんが、じゃあ忠臣がヤクザから抜けれるかと言えば、この時は無理ですからね。悲しいけれど、これが一つのターニングポイントとなってしまった。

 

こうして勇人を振り切り、兄貴の元へ向かった忠臣。

「兄貴……」と漏らす声の幼さ。まるで親に甘える子のような言い方。目に涙をいっぱい溜めて拳銃を西口へ向ける忠臣。

そんな忠臣をみて、「何でお前なんだよ……」と漏らす西口。なんとなくこうなることを察していたのかな。

西口は諦めたように新聞を畳み、微笑を浮かべながら「これお前にやるよ」とつけていた腕時計を外します。そんな兄貴に忠臣はもう一度「なあ…兄貴…」と呟いて、引き金を引きます。

 

ああ、何て残酷なんだ。18歳に何て業を背負わせるんだよ畜生と言ってやりたくなった。

忠臣にとって、西口は父親のような存在だったのだと思います。実際の父親は話に出てこないので分かりませんが、出てこないということは恐らく存在を知らないか、それと似たような状態だったのでしょう。

これまでの組長や兄貴との少しのシーンだけでも、忠臣が誰かに認められたい、褒められたいという気持ちがとても強いことは一目瞭然で、西口はそんな忠臣の強い承認欲求を少なからず満たしてくれる唯一の存在だったはずです。組長は上記に述べた通り、名前すら覚えてくれないような人ですからね。それでも組長の命に従い、西口を打った忠臣。ヤクザの世界で生きるにはこうするしかなかった。そんな決断を迫られ実行せざるを得なかった忠臣が、もう見ていて切なくてやるせなくて仕方なかったです。

 

やばい。ULTRAMAXだけでめっちゃ長くなってしまった。

でも、18歳忠臣はやはり原点なので、ここはしっかり語っておかないとね←

本当はGENERATION2とまとめて書くつもりでしたが、内容量を考えて分けることにします。次は、GENERATION2とそれを踏まえて、改めて闇金ドッグス1の考察をしようと思います。

 

恒例の余談。

勇人君のその後が地味に気になる。これ以降のガチバンシリーズには出てこないんですよね、勇人君。個人的に、今の堅気で生きる忠臣(闇金ドッグス)と勇人が再会するシーンを見てみたい。どちらも”友人”なんていう間柄でも性分でもないだろうけどね。ちょろっと再会して、すぐに「もう会うことはないだろうけどな」って別れそうだけど。それも見てみたいな。っていう個人的見解(笑)

「闇金ドッグス1」の感想と考察

 

皆さんこんにちは。

前回は燻った熱量を存分に吐き出してしまったため、まとまりのない文章失礼いたしました。

あれから一週間。土日がやっときて、またもや闇金ドッグスを観ています。

何度みてもいいなあ。

 

さて、今回は山田裕貴さんに猛烈にハマってしまったきっかけとなった、闇金ドッグスシリーズについて、シリーズ毎の感想および勝手気ままな考察をしていきたいなと思います。

 

順番悩んだんですけど、視聴した順番でいきます。ガチバンから書いた方が考察しやすいんだけど、ガチバン視聴前の感想も書き残しておきたかったので。

ですので、まずは「闇金ドッグス1」から。ネタバレありますのでご注意を。

 

【あらすじ】

若くしてヤクザの親分に成り上った安藤忠臣(山田裕貴)は手下のために足を洗うことになり、仕事上付き合いのあった闇金業者の小中高志(高岡奏輔)からも追い込みをかけられる。ふんだり蹴ったりの忠臣だったが、小中から債券の回収の術を学び、自分も闇金になろうと決心する。地下アイドル“けろリズム”(冨手麻妙・紗綾)をこよなく愛するキモヲタニートが客となるが、借金の回収に苦戦する。一方、悪徳事務所社長(津田寛治)に良いようにやられ、イベントやCD発売の度に高額な金銭を要求されていた“けろリズム”のえりなもまた、アイドルを続けるため闇金に手を出していた……。

 

おそらく闇金ドッグスシリーズの中でも、後味の悪さは1,2を争うかな。シリーズ5が出るまでは、ダントツだったでしょう。それぞれ違う後味の悪さだけれども。(私的には5の方が精神的にやられた)

私はこういうテイストの作品見慣れているので、大丈夫だったんですが、これで後々の作品観るのやめた方が結構いそうだなあという印象。

しかし、これを観ないことには始まらない。

 

始まりからいきなり暴力シーンとアイドルのライブ映像のコンビネーション。この落差、ギャップが凄い。

そんな中、オールバック姿で気だるげに歩く男が出てきます。これが安藤忠臣です。

若くして組長となった人物。18歳の時に、自分の兄貴分を殺した経歴の持ち主…と。若いのに組長まで上り詰めたのは、そういった経歴からかな?というかこの時点でいくつなんだ忠臣さん。20代前半かな?という憶測。

しかし、冒頭から不穏な状況が続きます。安藤と闇金小中のシーン。ヤクザの組長って闇金からお金借りるんだ…。この小中がこの作品においてはキーパーソンとなってくるようです。

話が進むつれ、どうやら「次郎」という安藤の舎弟が、何か問題を起こしたらしいことが分かってきます。その結果、安藤は自ら組長の座を退くことに。

ここで小中が出てくるわけです。組長だった安藤にはさん付けで、返済もいいと言っていた小中ですが、安藤が足を洗った瞬間、金を返せと迫ります。まあ、組長でも何でもない安藤にへこへこする理由はないですもんね。

無一文になった安藤から借金を返済させるために、小中は他の債権者を紹介します。その債権を買い、その債権者から借金を回収すれば、借金がチャラになるともちかけます。その債権者が後のシリーズ出てくる「須藤司」な訳ですが、まあ、彼については追々話すとして。

安藤は司を見つけ出し、「マグロ漁船で働かせる」という、ヤクザ社会に生きていた男らしい提案をしますが、小中に一蹴されてしまいます。時間がかかりすぎると。そこで小中はすぐに返済できる方法を須藤にもちかけ、あっという間に返済させてしまいます。

(余談ですが、この方法のために小中が電話をかけているシーンで、窓辺にもたれかかって立つ姿の忠臣さんめっちゃ美しいっす←)

結果として、借金が余計にかさんでしまい苛立つ安藤ですが、小中は手元にある金を元手に闇金を始めてみればと提案します。こうして、安藤は闇金の第一歩を踏むわけですが…。

 

 ここまで見ると、小中って不思議なキャラクターじゃないですか?いつも飄々として掴みどころがない彼は、何を以て忠臣さんに闇金を始めろなんて言ったのかな…と。単純に考えれば、安藤から借金を返させるため、なのかもしれませんが、それにしてもまどろっこしいやり方ですよね。(単にジャンプさせることが目的だったのかもしれないけど)その後、慣れない貸出や取り立てに苦戦する安藤に対して、ちゃんと助言までしてあげている。

かなり憶測ですが、何となく小中は安藤に対して、決して表には出さずとも買っていた部分があったのではないかと。付き合いがいつからあったのかは分かりませんが、少なくとも組長だった安藤から取り立てはしなかった訳ですし。もちろん、その方が利があると踏んでのことでしょうが、それこそ安藤を信頼していないとできない話ですからね。

小中もまさかこんなに早く、安藤が組長の座から落ちるとは思っていなかったのかもしれません。ヤクザの世界でしか生きてこなかった安藤が、堅気の世界で生き抜くためにの、小中なりの放免祝い(使い方は違うけど)のようなものだったのかな…と。

 

話は戻しまして。

闇金として「ラストファイナンス」を始めた安藤ですが、初めての借金回収に苦戦し奔走します。

客のひとりである丸屋から、借金を取り立てるために追いかけ回す安藤。丸屋は自分には組がバックについていると安藤を脅しますが、元組長の安藤はそんなの気にもしません。そのままその組と対峙する訳ですが、ここで衝撃の事実が判明。何とそこに自分の元舎弟であった次郎の姿が…。

安藤が組長の座を降りてまでして助けた次郎が、実は裏切りの張本人だったのです。次郎はもともと安藤のシマを狙っており、その座を奪うために影で動いていたと白状。何も知らなかったのは組長であった安藤だけだったと罵り笑います。

その上、チャカを取り出し、安藤をひざまづかせてチャカを咥えさせるという横暴っぷりなのですが…。

 

このシーン。ちょっと語っていいですか。このシーンですね、口に拳銃を入れられながら、安藤はじっと次郎から目を離さないんです。で、静かに涙流すんですよ。私これ初見で観たときに、安藤は屈辱と怒りでどうしようもなくなって、こんな状態になっているんだろうと思っていたんです。元組長が舎弟にこんなことされたら、そりゃ怒りで震えるよなって。もちろん、そういう感情もあっただろうし、加えて殺されるという恐怖も、それなりに感じていたかもしれない。

けどね、ガチバンシリーズを観た後だと、このシーンの見方が変わったんですよね。どちらかというと、悲しさの方が強かったんじゃないかなって。この件に関しては、ガチバンシリーズの考察にも絡んでくるので、詳細はそちらの方に書くことにしますが…。とにかく切なさ半端ないです忠臣さん。この後債権者に唾吐きかけられて、涙も同時に手で拭うとこなんか痛々しくて見ていられません。

 

借金も取り立てられない。自分の借金はかさむばかり。信頼していた舎弟にまで裏切られていた。小中からも厳しい言葉を浴びせられ、心身ともに疲弊する安藤。よれよれのワイシャツ姿で道路の隅に座りこむ安藤の姿は、本当に地に落ちた人間の姿そのもの。けれども、その瞳からはまだ光は消えていない。

さすが元組長やってただけはありますね。精神的にタフというか、むしろ追い込まれたことで、本当の意味で腹を括れたのかもしれません。

ここからの安藤の勢いが凄い。

債権者の母親に包丁を向けられても、手で包丁を掴んで止め、怪我を負ってもそのままひたすら探し回る。やっと手がかりを見つけて、探し当てた部屋には小中の姿が。お互いに金を貸していた債権者が、地下アイドルとそのファンで、ファンであるオタクがアイドルを殺そうしている現場に遭遇するってどんな修羅場だ。

 

そういやこの地下アイドルのオタクの話、全然してませんでしたね。事務所が悪徳でどんどん金をむしり取られている地下アイドルと、仕事もせず母親の金を無心している中年オタクなんですが、何ともリアルというか…こういう世界を現実であまり見たことないのですが、ここまではなくとも、こんな感じなのかなって思わせる演出でちょっと怖かったです。とはいえ、アイドルの方も事務所の問題こそあれ、ちょっとどうかなと思うシーンもあったし、オタクである良夫に関してはもう擁護することは何もない。

 

さて、こんな借金まみれ3人組が雁首そろえた状態に、さすがの小中も呆れ気味。面倒はごめんだと早々に立ち去ろうとするのですが、ここで状況を理解した安藤が「女を債権を買わせてくれ」と小中に訴えます。小中は訝しげに債権を売り渡すのですが、ここから安藤忠臣が本領発揮。ここの表情が凄い。ゾクッとします。

あんなに脅しと暴力に訴えた取り立てをしていた安藤がですよ?優しい声色で良夫に話しかけるわけです。「良夫、お前本当は愛してるんだよな?」と。

安藤は本当に愛しているなら、良夫がえりな(地下アイドル)の借金を代わりに払って、スーパーヒーローになってみないかと提案します。その方法というのが、良夫が担保にしていた母親の生命保険。その保険を最大限に利用するにはどうすればいい?と投げかける安藤。

「家族を包丁で刺しても、保険金目当てになるから保険は適用されない。だったらどうすればいい?普通に働いても到底借金は返せない。それがすぐに金になるなんて夢のような話だよな。その金で、借金返して、余った金でえりなと幸せになれるんだよ」

ここ、このシーン。あくまで優しく笑いかけながら話す忠臣さん、恐ろしさ半端ない。言ってることえげつないけど、借金で追い込まれた人間はこれで心動いちゃうんだもんなあ……。そして、えりながなかなか腹黒い。つい数分前にはキモオタと罵っていたのに、「このままじゃ、誰もえりなを助けてくれない」って訴えちゃうところ、さすがというか何というか。追い込むように放たれた「ほら。スーパーヒーローにならなきゃ」っていう安藤の台詞、もう良夫にとってみたら洗脳みたいなもんだよね。

で、まあその後良夫がとった行動は……想像できますよね。これが後味が悪いと言われる結末な訳ですが。

 

こうして小中への借金を完済した安藤。えりなは規約違反の行動をとったとして、違約金を事務所から請求されてしまいます。良夫はその後どうなったんだろう。

最後は安藤が闇金の軍資金として小中から金を借りたところで終わります。

 

いやー最初から最後までなかなかヘビーでした。安藤が良夫にとらせた借金の返済方法はきっと賛否両論でしょう。しかし、これはもうこうするしかなかった、と言ってしまえば終わりですが、私はもうこれは致し方ないのかなと思ってしまいました。

闇金を借りて、地に落ちた人間の行く先ってこういうことなのかなって。現実がどうかは知りませんが、少なくとも綺麗ごとで終わっていい話でもないですからね。

 

この闇金ドッグス1はガチバンシリーズを観たか、観てないかで話のとらえ方が結構変わると思います。

1だけを観た状態では、元組長であるが故に、それなりの覚悟と器量を持つ安藤という男が、堅気で闇金として奮闘する、ある意味ありきたりな話に捉えていました。それはそれで、物語として面白いんですけどね。実際私はハマって2と3を続けて観たわけだし。

けれど、ガチバンシリーズを観た後だと、シーンごとの忠臣さんの表情や言動に別の解釈が次々出てくるんですよね。忠臣さんの人間としての生き方や考え方が解釈として広がって、一気にリアリティが増す。

最後のシーンも然り。小中の「元組長さんがやることは仁義もへったくれもありませんね」という言葉に対しての忠臣さんの目が、ガチバン視聴後だと非常に印象に残ったんです。動じることなく、無表情で煙草を吸っている姿は、最初見たときは非情なことをしても動じない人、という印象だったのに、目に着目すると完全に”虚無”になってる。

忠臣さんが”無”になる瞬間ってこう……スイッチがあるんですよね。彼の中での。ガチバンシリーズと後の闇金ドッグスシリーズを見続けると、この忠臣さんの”スイッチ”が入る瞬間って結構重要なシーンだと思うんです。

これはもうガチバンシリーズの感想を書かないと、理解が難しいところではあると思うのですが……。

ガチバンシリーズの感想書いたら、安藤さん自体の考察も詳細にできそうなので、とりあえず今回はこの辺にしておきます。まとまりのない文章になっちゃったな^^;

 

またまた余談ですが、良夫君の身体がめっちゃバキバキに鍛えられてて、オタクとのギャップにびっくりしました。多分ニートのオタクはあそこまで鍛えないと思うよ。とはいえ、良夫役の古澤裕介さん、見事な演技でした。

 

風邪をひいたら山田裕貴さん演じる安藤忠臣に全てもっていかれた話

タイトル長。すみません。

タイトルの話に行く前に、しばし前置きが長くなりますが、どうかお付き合いください。

ある連休前の平日、私は高熱とエンドレスに流れ続ける鼻水にやられて、会社を休んでいました。夏バテというやつでしょうか、年休消化も碌にできていなかったので、この日死ぬほど寝続けました。10時間は優に超えていたと思われます。でも寝続けているのも遂にはしんどくなって(というか軽く脱水症状になりかけた)、何か映画でも観るか…と登録済みしているdTVを開きました。そこで最近配信開始になった映画一覧を見ていると、私好みの“闇金”という文字。おしゃれな海外ドラマも、胸キュン必須と謳っている韓国ラブコメ物も、私は苦手なのです。

 

さっそく、開いてあらすじ確認。「若くしてヤクザの組長となった男が足を洗って闇金業者に…」これは極端に面白いか面白くないかが分かれるパターンの奴だ…。うーん。と正直あまり期待せずに見始めました。

 

 

そして90分後。放心状態とはまさにこのこと。

ナニコレ!めっちゃ面白いやん!!!

それが「闇金ドッグス」との出会いでした。

 

dTVにはシリーズ3まで配信されてあったので、そのままぶっ続けで観ました。ありがたいことに世間は三連休。38度近い熱も吹き飛ばす勢いで夢中になりました。

闇金ドッグス1は後味の悪さもあったけれど、2と3は成長した忠臣さんといつのまにかバディ組んでる須藤司の絶妙な掛け合い、そして終盤のスカッとジャ〇ン的な終わり方で、重い気持ちを引きずることもなく、視聴できました。

 

ふう。と一息ついて私がしたこと。そう。

闇金ドッグス」「安藤忠臣」をひたすら検索。検索。検索。

ハマったら一直線な私。あらゆる映画の感想を読み、観ていなかった予告動画、あらすじ、演者のインタビューまですべて読み込みました。(おかげで熱は下がらずじまい←)

 

そして知ってしまいます。闇金ドッグスの安藤忠臣にいたるまでの物語があることを。

そう、それがガチバンシリーズ中の「ガチバン ULTRAMAX」「ガチバン NEWGENERATION2」なのです。

え、何この贅沢。今のあの無表情で無骨でタバコだけで生きているような忠臣さんの過去が見れんの?しかも2作品もあるの?え?安藤さん愛され過ぎじゃない?←

となり…これはもう観るしかない!と早速レンタル。

皆さんお気づきですか。闇金ドッグス視聴してから、ここまでで1日も経ってないです。最強すぎませんか安藤忠臣。

 

はい。で、観ましたよ。

「ガチバン ULTRAMAX」

18歳の安藤忠臣天使かよ!!!!

いや、天使はいいすぎか。いや、でも、あのピュアさは闇金ドッグスの安藤さん知ったうえで観たらもうそりゃ、驚愕ですよ。

学がなくて、喧嘩しかなくて、愛に飢えた18歳安藤忠臣。

兄貴とのシーンは号泣でした。ああ、これが闇金ドッグス1で言ってたのって、この事だったのか…とやっと理解し、更に泣けました。

しばらく放心。

ちょっと心落ち着かせて、ニュージェネレーションには行かず、もう一度闇金ドッグス1を観る。

この時点で完全に「安藤忠臣」という男に魅了されていました。

 

これはちょっとやばい。とようやく就寝。

 

次の日、「ガチバン NEWGENERATION2」「闇金ドッグス4」「闇金ドッグス5」をぶっ続けで視聴。(微熱と咳と鼻水を添えて)

最後の5で暗く重い気持ちにさせられながらも、安藤忠臣というキャラクターの魅力にめっきり浸かってしまったのです。

 

そして同時に、まるで本当に実在しているのではないか?とまで思わせる程の演技力を発揮された山田裕貴さんに注目。

正直、これまで存じ上げなかった役者さんでしたが、ここまで魅力溢れる演技をする役者さん…一体何者や!?と、ネット検索しまくって、素顔のチャーミングでたまに見せる奇々怪々な行動の数々(主にインスタ動画)、インタビューやブログの文面から滲み出る誠実さのギャップにもう降参状態でした。

(というか、ここで気づいたけど、演者より先に役の名前で検索させる「闇金ドッグス」の「安藤忠臣」凄すぎませんか?これが山田裕貴さんのなしえる技か…と震えた)

 

何度も言いますが、ここまでで2日しか経っていません。あな恐ろしや。

でも検索しても検索しても、足りない。情報量が足りない。

もっとこの「好き」を共有できないものか!と勢いでTwitterとブログまで作っちゃう奴。(この熱量仕事でも出したい)

 

これほどまでに三連休万歳と思ったのは久しぶりでした。

体調不良で予定も立てられず、悲しみに暮れていたあの日が嘘のように。熱中できるっていいね!きっかけなんて些細なものだと改めて思います。言い方が合っているかはわからないが、根っからのオタク体質なんだろうな。

そんなことはいいとして、まあ、この三連休をフルに活かして、山田裕貴作品をとにかく観れるだけ観ました。苦手な純愛ラブストーリーまで手を出した。自分でも驚愕だよ。

どれも本当に素敵だった。もはやひいき目もあるかもしれないが、それでも良いものは良いんだ。

 

これ以上語ると語彙力のなさが露見しそうなので、とりあえずここまでにしておきます。

作品別に感想および考察載せられるくらいの熱量はあるので、それはまた追々。

 

長々とお付き合いありがとうございました。

 

追記:おかげさまで熱は下がりました。鼻水だけは治ってくれませんでした。でもいいんです。いい三連休でした。ありがとうございました。